(読売 10月31日)
外来生物駆除などを通じ、野生動物の現状を学ぶ
活動が始まっている。
「エサが食べられてる。
足跡があるけど、これはモグラみたいだな。
ワナの場所を替えた方がいいかもしれないね」
神奈川県葉山町の山中で行われた
「在来生態系保全ネットワーク」の野外実習。
アライグマの捕獲ワナのかけ方を学生らに指導していたのは、
同ネット設立メンバーで
三浦半島自然誌研究会代表の金田正人さん(38)。
同ネットは、アライグマによる被害の拡大に危機感を抱いた
首都圏の学生や社会人らにより、2003年に設立。
三浦半島などを中心に、アライグマの駆除や
台湾リス対策の研究を行っている。
北米原産のアライグマは、1970年代に人気アニメの
影響などでペットとして次々輸入。
逃げ出したり、捨てられたりして、多くが野生化して繁殖。
今や農作物を荒らし、従来の生態系に影響を及ぼすとして、
外来生物法や鳥獣保護法の規制対象。
同県・三浦半島でも、99年ごろから激増。
金田さんは、04年から県の計画に基づいて駆除を始めた。
年間数十頭を捕獲、薬物で安楽死させ、
研究材料として大学などに送っている。
学生らは年数回、駆除の現場に立ち会い、ワナも仕掛ける。
この日は、日本大学、帝京科学大学などから学生7人が参加。
最初は誰もが戸惑い、悩み、さんざん議論する。
現場に足を運ぶことで、スイカ、トウモロコシをはじめとした
農作物被害や、トウキョウサンショウウオ、ヤマアカガエルなどが
激減している状況を見て、現実に向き合う必要を自覚。
日本獣医生命科学大学3年の武良千里南さん(20)は、
「できることなら殺したくない。
『かわいそう』と何もしないでいると、生き物を生かす環境が
どんどんおかしくなってくる。
アライグマが被害を与えている現場を、理屈でなく肌で知りたかった」
同ネット代表の同大博士課程3年加藤卓也さん(27)も、
「外来生物の影響は脅威だが、アライグマは人間の都合で輸入、
野生化した。安易に駆除すればいい、と片づけず、
責任を持ってつきあっていきたい」
大学でも、専門知識を普及させる動きが本格化。
日獣医大では、07年、野生動物教育研究機構を設立、
3年間、「野生動物問題解決人」というプログラムを実施中。
クマ、イノシシといった野生鳥獣の駆除などに携わる
自治体職員を集め、「被害を出すサルの群れの動きを知る」など
専門家の知識や技術を学び直してもらう。
機構長の羽山伸一・准教授(49)は、
「獣医師や実際に接する現場の担当者でも、
野生動物の詳しい知識や扱い方の技術を持つ人は少ない。
生態を実践的に学ぶ機会をもっと増やさなければ」
野生動物を知る学びは、まだまだこれからだ。
◆外来生物法
2005年6月施行。
生態系や農林水産業に悪影響を及ぼす外来種を、
国が特定外来生物に指定、輸入や運搬、遺棄、飼育などを
原則禁止する。罰金は最高1億円。
アライグマ、オオクチバス、ジャワマングース、カミツキガメなど指定。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091031-OYT8T00284.htm
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