(読売 3月10日)
不十分な日本語で生活する外国人の学習を、
地域が一体となって支える。
愛知県豊田市の保見団地集会所に、ブラジル人と日本人ら
十数人が集まった。
初心者向けの会話クラスと、中級者向けの読み書きクラスがある
地域日本語教室。
読み書きクラスのこの日のテーマは、「出身地」。
地図や観光資料を持ち寄って、「海がたくさんあります」、
「サンパウロは空気があまり良くない」など和気あいあいと話した後、
受講者はその内容を紙に書き出した。
ブラジル人松田エリザベッチさん(54)は、会話は滑らかだったが、
書いてみると、濁点が抜けるミスを指摘。
「日系人の夫と日本に来て19年ですが、漢字やカタカナは難しい」
この教室を支えるのは、市、名古屋大学、自治会、企業などが
協働して進める「とよた日本語学習支援システム」。
トヨタ自動車が市に寄付した1億円を基に、2008年度、
学校を終え社会に出た同市在住・在勤の外国人らに、
生活上必要な日本語の習得を促すため、始まった。
同市は、外国人集住都市会議会員都市の一つで、
自動車産業などで働く外国人約1万5000人が住む。
大半が、1990年代に来日した日系人と家族で、
長年住んでも、日本語が不得手な場合が多い。
システムのコーディネーター土井佳彦さん(30)は、
「あまり会話せず働ける工場に、会社の送迎バスで通勤し、
買い物をする店ではポルトガル語が通じる、
日本語を話さなくても生活できる環境ができあがってしまった」
システムでは、まず、地域や企業内で日本語学習教室を
開設しようと考える人に対し、講師やボランティア派遣、
一部費用負担などを行う。
専門講師やボランティアの育成も支援。
日本語で何ができるかを7段階で判定する
「とよた日本語能力判定」も開発中。
既に一部が完成し、指導の参考にしたり、
学習費用免除の判定などに使ったりしている。
ウェブ上に、コンピューター教材「とよた日本語eラーニング」を公開。
「電話で休むと学校に伝える」、
「子どもがけがをしたと学校から連絡が来る」など学校、市役所、
病院の3場面で必要な会話を、ポルトガル語訳の字幕付き動画で紹介。
ひらがなやカタカナのほか、履歴書の書き方も自習できる。
こうした学習を通して、地域住民と外国人の接点が増え、
相互理解が徐々に進んでいる。
09年度、日本語教室を開いた企業から、
「簡単な日本語の会話も増え、人間関係もよくなってきた」
などの声も寄せられた。
ボランティアで教室を手伝う市内の無職増田和信さん(61)は、
「教えるだけでなく、楽しく交流でき、相手の国の文化・習慣を
教えてもらえるので面白い」
外国人が、日本語を学べばすむわけではない。
日本人も、相手から学んでいくことが求められている。
◆外国人集住都市会議
南米日系人を中心とする外国人住民が多数居住する都市が、
情報交換や課題解決のために2001年設立。
群馬県太田市、浜松市、岐阜県美濃加茂市、
三重県鈴鹿市など28市町が参加。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100310-OYT8T00181.htm
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