(読売 3月11日)
外国人の少ない地域で、日本語学習の取り組みが粘り強く続く。
「子どもは耳がいいのよ。お母さんが『聞いてください』と、
『い』をはっきり言わないと、『切ってください』と間違えちゃうよ」
「『教えることができません』と『教えません』は、何が違うかな?」
秋田県藤里町の三世代交流館。
月2回の日本語の出張講義で訪れた北川裕子さん(60)が、
韓国と中国から国際結婚でやってきた女性2人に、
はきはきとした話し方で日本語を教える。
北川さんは、同町に隣接する能代市を拠点に、
同市内や近隣で日本語学習教室を開催する
「のしろ日本語学習会」の代表。
1997年、韓国から来日した農業佐々木幸子さん(63)は、
「最初の何年かは、家でおばあちゃんやだんなと
方言で会話するばかりで、上手なつもりだった。
ある時、『日本語が下手』と言われてショックで」
近くに学ぶ場もなく、北川さんに頼み込んで、2004年から
農作業や家事の合間に学習を始めた。
08年、日本語能力試験3級に合格。
地元の世界遺産・白神山地を訪れる韓国人観光客に、
簡単な通訳をするほど上達。
「まだまだ、がんばればもっと上手になるよ」と、北川さんは励ます。
秋田県の外国人登録者数は、中国人、韓国人、フィリピン人を中心に、
4405人(2008年末)で、全国で4番目に少ない外国人散在地域。
日本人の配偶者を持つ外国人が、約1割。
約20年前から、農村地域での「外国人花嫁」が増えた地域。
北川さんが能代市で、日本語を母語としない人を対象に
同学習会を始めたのは93年。
中国帰国者の学習支援にかかわったのがきっかけ。
中国やフィリピンなど、海外出身の主婦やその子どもら66人が登録。
北川さんのほか、高校生から80歳代まで、
地域住民約20人がボランティアで教えている。
地方での生活情報は、主に自治体の広報紙から得るため、
読み書きの基本が大事。
テキストに沿って、基本的な文法から学び、受講者には
日常会話レベルの日本語能力試験3級、
可能なら、同1級に合格するのを目標に学習。
盆踊り、花見、忘年会など地域住民を交えた行事を開き、
地域に溶け込めるよう努力。
県立高校放送部員として、一昨年春から同学習会の取材を行い、
その後ボランティアとして参加していた
3年生の伊藤ななせさん(18)は、
「最初は、外国の人が相手ということで緊張し、壁がありましたが、
活動するうちに、地域の同じ仲間なんだな、と感じる」
「高齢化の進む地域を支えてくれる、我々なんか及ばない
力を持つ人を育てる教室」と北川さん。
今後は、後継者育成が課題。
◆日本語能力試験
日本語を母語としない人を対象、財団法人日本国際教育支援協会
などが年2回開催、今年度第2回は国内で9万5000人、
海外で42万人が受験。
1~4級があり、大学受験には1級レベルが必要。
来年度から内容が一新され、レベルは5段階に変わる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100311-OYT8T00200.htm
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