(日経 2010-03-16)
医薬品や化粧品分野向けの超微粒化装置の開発で、
大手企業も一目置く会社が、大阪府和泉市に。
産業機械メーカーのエム・テクニック(榎村真一社長)。
同社の最新装置で作る微粒子の直径は、最小で数nm。
この分野で、限界とされていた10nmの壁を超えた。
年商25億円規模の中小企業、ナノテクという特殊分野で
飛び抜けた技術をもつことで、大手にも引けを取らない存在感。
「粒子を細かくすると、溶けにくい薬も溶けやすくなり、
意外な性質を発揮する」
榎村社長は、ナノテクにこだわる理由。
微粒子にすれば、物質一定量あたりの表面積が広がり、
溶解度や吸収性などが変化。
医薬品開発。
「溶けやすくすることで、これまでにない新薬の開発につながる」
「ULREA(アルリア)」は、直径数ナノメートルの超微粒子を
製造できるのが特徴。
他社の従来機では、作れる粒子の直径は数10~100nmが限度、
エム・テクニックの装置を使えば、ひと回り小さくできる。
装置の構造は、円盤状の上下2枚のディスクで構成。
下側のディスクが高速回転し、上から圧力を加えて抑える
固定式のディスクとのすき間に、微粒子の原料となる液体を流し込む。
すき間の寸法は、1~30um。
ディスクの回転に合わせ、かき回される液体に別の原料液を加え、
両方の液体が化学反応を起こし、
微粒子となって装置から出てくる仕組み。
ディスクの回転の速さとディスク間の圧力を変え、
液体の反応時間を調整し、微粒子の大きさを自由に設定。
他社の従来機は、高圧状態の炉の中で、原料の液体に含まれる
粒子を衝突させ、粒子を砕くが、
この方法だと粒子の直径は、「数100~10nmが限界」。
違いは、「粒子を砕くのではなく、化学反応を使って
超微粒子を生成する点」(榎村社長)。
粒子の大きさを均一にできる利点、高圧にする設備などが不要、
装置の小型化に。
同社の技術に注目するのは、製薬会社だけではない。
プリンターのトナー、液晶テレビ用部材、電子部品の材料など、
デジタル素材分野でも、微粒子の研究に関心を寄せる。
プラントメーカーの設計者だった榎村社長は、
1988年、27歳で起業。
円盤式のディスクを使った独自の微粒化装置の開発を続けてきた。
微粒化装置の研究成果を論文にまとめ、東京理科大で博士号取得。
4人の社員が、仕事と両立しながら大学院で学ぶ。
大手企業から出資の話を持ちかけられても、
「研究の自由度がなくなる」と断った。
ナノテク粒子の製造装置では、特定の業界向けでなく、
応用のすそ野が広い分野を視野に入れている。
企業規模は小さくても、対等な立場で技術開発に取り組め、強みを発揮。
今後の稼ぎ頭と位置づける新型機「アルリア」の価格は、2000万円。
年間100台の販売が当面の目標。
2010年12月期、35億円程度の売り上げを見込む。
アルリアの研究開発に力を入れたため、
ここ2年間は売り上げが落ちこんだが、
「新型機で盛り返し、11年中の上場を目指したい」。
「ナノテク」と言うと、中小企業にとっては取り組みが難しい
最先端分野のように聞こえる。
エム・テクニックは、“一芸”にこだわり、独自のノウハウを
磨き抜いたことで、技術の壁を超えた。
大手が手掛けない技術のレイヤー(層)を、
「スーパー中小企業」が発掘・補完し、優れた製品を世に送り出す。
エレクトロニクスや化学、医薬品などは、
多層的な技術の積み重ねが欠かせない分野。
エム・テクニックのような企業の存在は、ものづくりで
日本が強みを持ち続ける1つの象徴といえるのでは。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon100315.html
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