2010年3月25日木曜日

日本イーライリリーの藤本・医学科学本部長「糖尿病、中枢神経系で新薬を相次ぎ開発」

(日経 3月10日)

日本の製薬会社が新薬不足で苦戦するなか、
豊富な新薬候補品(パイプライン)を抱える外資系製薬会社が
日本での存在感を増している。

米製薬大手の日本法人、日本イーライリリーも、
2009年の売上高が19%増の1092億9500万円となるなど、
伸びが際立っている。
どのような新薬を日本市場に投入し、シェア拡大を狙うのか?
研究開発戦略を担う、藤本利夫・医学科学本部長に聞いた。

——どの分野で新薬開発に力を入れるのか?

当社が強みとする糖尿病や中枢神経系分野を中心に、
積極的に新薬開発を進めていく。
現在、日本で2型糖尿病の治療に使う『エキセナチド』
承認を申請中。
皮下注射タイプで1日に2回、投与して使う。
体内の血糖値に応じて作用し、高血糖のときだけ
膵臓でのインスリン分泌を促す。
けいれんなどが起きる低血糖状態になりにくいのが特長で、
『GLP—1受容体作動薬』と呼ばれるタイプの作用方法の新薬」

「海外では、100万人以上の患者の治療に使われ、
実績を重ねている。
エキセナチドは1週間に1回、投与すれば済むように
薬効を徐々に発揮するように改良した新タイプも現在、
日本で開発最終段階に相当する第3相臨床試験(治験)を実施。
投与回数を減らせるので、患者の負担が軽くなる。
今後の第3相治験の結果を踏まえ、
日本でも承認申請するかどうか検討していきたい」

——統合失調症薬「ジプレキサ」など、中枢神経系の薬にも強い。

「ジプレキサは、日本で2009年に前年比7%増の
435億円(薬価ベース)の売り上げ。
ジプレキサは躁、うつ状態になる『双極性障害』の治療にも
使えるように、日本で開発を進めている。
双極性障害のうち、躁状態を対象とした適応症追加を承認申請中。
うつ状態についても現在、日本で第3相治験を実施中で、
適応症拡大を目指している」

——日本では、エーザイの「アリセプト」しかない
アルツハイマー型認知症治療薬についても、新薬を開発中。

「アルツハイマー薬では、2種類の薬が開発最終段階の
第3相治験まで進んできた。
『LY450139(開発番号)』は、錠剤の飲み薬。
化学合成などで製造する従来型の低分子化合物で、
認知症の症状の進行を抑制。

もう一つは、『LY2062430(同)』という静脈注射の薬。
人の免疫の仕組みを活用した抗体医薬品と呼ばれるバイオ製剤。
アルツハイマーの発症に関係するとみられている
アミロイドベータという物質にくっつき、取り除く。
有効性については、治験で調べている段階だが、
沈着したアミロイドベータに作用し、減らすことができる
可能性もあると期待」

——製薬各社が新しい薬を生み出すのに苦しむなか、
なぜ新薬候補品を次々に開発できるのか?

「研究者やバイオベンチャー企業などと積極的に連携する
『オープンイノベーション』の考え方が功を奏している。
研究開発では、複数の医薬品開発業務受託機関(CRO)と提携
各国の大学などとも協力関係にある。
たくさんの候補品を集めつつ、新薬として十分な安全性や
有効性を持ち、成功できるかどうかをグローバルで判断する
『コーラス』と呼ぶ独自の組織を持っている。
新薬の研究開発状況や承認基準などに詳しい約30人のベテランで
構成され、コーラスで素早く判断することで、成功確率を高めている」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100309.html

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