(2010年3月16日 毎日新聞社)
メタボリックシンドローム対策として実施されている、
特定健診・保健指導(メタボ健診)で使う腹囲基準を検証している
厚生労働省研究班は、腹囲が基準未満でも、血圧や血糖値などが
高ければ、心筋梗塞など循環器疾患になる恐れが高いとの研究成果。
肥満ではない人への対策の必要性を、
最終報告書に盛り込む方針で、肥満対策中心の健診制度の
見直しにつながりそう。
◇死亡率低い「小太り」
メタボ健診は、循環器疾患になりやすい目安として、
内臓脂肪の蓄積による腹部肥満に注目。
腹囲や肥満を示す体格指数(BMI)が基準を下回れば、
原則として保健指導の対象にならない。
全国の40~74歳の計約3万1000人を対象とした
12種類の追跡調査から、循環器疾患の発症と腹囲の関係を
調べたところ、腹囲やBMIが基準未満でも、
血圧や血液検査値が高ければ、腹囲やBMIが基準以上の人と
ほぼ同じ程度に循環器疾患を発症するとの結果。
08年度から始まった健診の現場では、
「やせていても、生活習慣病の恐れのある人が見落とされる」
と、戸惑いの声。
研究班は、この結果を踏まえ、最終報告書に
「肥満ではない人への対策も必要」との提言。
同様のデータは他にもある。
大櫛陽一・東海大教授(医療統計学)が、
伊勢原市の40歳以上の住民計約2万2000人を
平均7年間追跡、BMIがメタボ健診の基準を少し超える
「小太り」(BMI25~27未満)の人の死亡率が最も低く、
「やせ」(BMI18・5未満)が最も高かった。
大櫛教授は、「日本人には、健康に影響を与える肥満は少なく、
世界的にもスリム。
統計を見ても、肥満の人の方が長寿であることが分かった」
◇腹囲測定、揺らぐ根拠
厚労省研究班の分析によると、腹囲測定自体の根拠も揺らいでいる。
男女ともに、腹囲のどの数値を基準にしても、
基準以上の腹囲の人が実際に循環器疾患になる危険性は
6割に満たなかった。
基準の数値にかかわらず、腹囲で危険性のある人を見分けられる
確率は、「ほぼ五分五分」。
女性は、発症の危険性と腹囲の関連が低く、
「女性は、腹囲を測定しないという議論も将来はありうる」
坂本亘・大阪大准教授(統計科学)は、
「公表されたデータを見ると、腹囲だけで発症の危険性が高い人を
見分けることは不可能。
腹囲を健診の必須項目とする根拠は薄い」
大島明・大阪府立成人病センターがん相談支援センター所長は、
「現在のメタボにのみ焦点を当てた健診を早急に見直し、
禁煙支援など他の要素も含めた国民の健康維持につながる
健診事業に切り替えるべきだ」
研究班は、「40~50代の働き盛り世代の男性は、
過去の世代に比べてメタボが多く、85cmを基準とする
腹囲測定に意味がありそうだ」と、現行制度の大幅変更には慎重。
「メタボ健診が、肥満への意識を高めた意義は大きい」とも評価、
現制度に非肥満者対策を加える形を想定。
厚労省は、「日本内科学会などによるメタボ診断基準の
検討結果などを踏まえ、制度の見直しを考えたい」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/3/16/117498/
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