2010年4月5日月曜日

変わる校舎(7)里山再生 環境意識育つ

(読売 3月25日)

学校施設を教材に、環境を学ぶ。

放課後。
県立船橋芝山高校の生徒6人が、長靴を履き、校舎を出た。
向かったのは、敷地北端にあり、住宅地と斜面林に挟まれた
「芝山湿地」。
約600平方メートルに、600種を超える生物が生息するビオトープ

6人は、科学研究部の1、2年生。
この日のお目当ては、絶滅の恐れのある野生生物を記載した
県のレッドリストで、最重要保護生物に指定されている
ニホンアカガエルの卵。
部長の陸芳樹さん(17)らは、池の中にゼリー状の卵塊を見つけると、
網を使って採取。
計測器で大きさを測り、デジタルカメラで撮影。
生息状況を把握するため。

湿地はかつて荒れ地で、不法投棄が絶えなかった。
当時の理科教諭らが整備に乗り出したのは、1999年。
ヨシを刈り、小川を引き、木道を設けるなど手を加えるうち、
次第にかつての里山の生態がよみがえった。

「ビオトープで、素晴らしく世界が変わった」。
生物担当の佐野郷美教諭(55)は、感慨を込める。
生物の「再生」を学ぶ授業では、生徒全員が芝山湿地で
教材となるプラナリアを採取する。
問題を抱える生徒を、保健教諭が湿地に連れ出し、
自然の中で語らうことも。
「生徒の落ち着きや素直さは、ビオトープが影響しているのでは」

芝山湿地では、ヘイケボタルが復活。
毎年7月、「ホタル鑑賞の夕べ」は、生徒から
「家族や友達を呼びたい」という声が出るほどの人気。
昨夏、学校のそばにある高齢者施設に、
同部3年の戸谷博明さん(18)が芝山湿地の環境を凝縮した
水槽を持ち込み、2日間にわたる鑑賞会を成功。

近くの小学校では、ビオトープに芝山湿地にいるホタルの幼虫が
放される予定、地域ぐるみでホタルの里を目指す計画。
戸谷さんは入学当時、介護職志望だったが、
「大学でも、ホタルや絶滅危惧種に適した環境について学びたい」と、
生物科学系学科への進学を決めた。

高知県香南市の市立野市小学校の場合、
校舎そのものが環境を学ぶフィールド。
2005~08年度に改修を行い、360枚の太陽光発電パネルや
風力発電機を設置。
校内を巡るエコツアーで発電の仕組みを学んだり、校舎を覆うように
琉球アサガオなどを植えて「緑のカーテン」を作り、
二酸化炭素吸収量を計算したりした。

田中紀子校長(54)は、「子どもたちから、『校長室の電気がつけっぱなし』
とチェックが入ることも。エコが、普段の生活に根づいていくことが大事
休日に学校に来て、自主的に敷地内のゴミを拾って歩く児童も。
同小のように、環境を考慮した校舎は「エコスクール」と呼ばれ、
文部科学省によると、全国の公立幼稚園と小中高校で、
09年8月末現在で951校。
身近にある自然が、子どもたちに環境意識を植え付ける。

◆ビオトープ

ドイツ語の造語、「生物の生息・生育空間」の意味。
日本では、造成事業で整備した湿地や池などを指すことが多い。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100325-OYT8T00249.htm

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