(日経 2010-03-02)
羽田空港で、4つ目の新滑走路の建設が進んでいる。
埋め立てなど、土台の設置作業はほぼ完了、
長さ2500mの「D滑走路」が、海上にその姿を現しつつある。
できていく巨大施設の迫力を感じたい、と多くの人が見に訪れている。
・2007年7月の開設以来、新滑走路の展望台を訪れた人数は
2月中旬まででのべ4万8000人。多い日は、1日に約300人。
・新滑走路などの拡張により、羽田の年間乗降客数は
09年の約6166万人、22年度に8550万人に増える見通し。
・新滑走路が完成すると、年間の発着可能回数は
現在の約1.3倍にあたる約40万7000回。
羽田空港の第1、第2旅客ターミナルから、車で約10分。
D滑走路は、空港用地の南端沖に建設。
見学するなら、一般の人も無料で入れる展望施設を利用。
3階建ての施設の屋上に上がるとすぐ、600mほど沖の海上に
無数に立ち並ぶ巨大な鉄柱が目に入った。
D滑走路の最大の特徴は、土台の一部が海面より14~15m
高いところにある「高床式」となっていること。
鉄柱は、高床の地面を支える。
職員が、「柱の数は1165本に及びます」、見学者から驚きの声。
この高床式の土台部分を、関係者は「桟橋」と呼ぶ。
新滑走路の場合、すべてを埋め立てると、
多摩川の水流を妨げて水害を招く可能性がある。
全長3120mの土台の約3分の1に、桟橋式を採用。
柱の上にパネル状の鉄骨構造物を載せ、さらに上に
コンクリートを敷くという構造は見もの。
D滑走路と従来の用地を結ぶ橋部分も確認。
滑走路は、展望台から奥に向かって伸びるため、
東側の先端が見えず、実は全体の長さがわかりにくい。
長さ約620mの橋は、眼前に横たわる形になるため、
巨大さを実感しやすく、迫力がある。
工事に関する展示をしている3階をのぞいた。
地盤沈下を抑えるため、軽量化したコンクリート材を手に取ると、
軽さに驚く。
床一面に描かれた1300分の1の大きさの空港全体図は、
航空写真を基に、新しい旅客ターミナルや駐機場など、
計画している拡張工事の全容が一目で分かる。
新滑走路の土台の東端が見えると聞いて、第2旅客ターミナルへ。
5階の展望デッキに上がって南方を見ると、
手前のビルの壁際から突き出るようにして、細長い地面が
海上に出来上がっていた。
機体が離陸するあたりになる。
滑走路は、10月に始動する予定。
新滑走路から、飛行機が飛び立つ様子が思い浮かんだ。
◆取材を終えて
展望台を訪れたのは、寒風吹きすさぶ2月中旬。
屋上の展望台で、寒さに震えながら説明を受けていると、
新滑走路の少し西の空からこちらに近づくように、
飛行機が高度を下げてきた。
飛んでいる旅客機を、これほど間近に見られる場所は、
そう多くないはず。
羽田空港では、北風が吹く「北風運用」の際、
南北に伸びる既存のA滑走路の南側から飛行機が着陸。
展望台から、その時の機体がよく見える。
「(展望台で)飛行機の写真を撮っている人もいる」
(東京空港整備事務所の小笠原政之先任建設管理官)、
撮影スポットでもある。
私自身は、特別に飛行機が好きというわけではないが、
巨大な機体が目の前に迫り胸が躍った。
大勢の人や貨物が、遠いところからやってきたと考えると楽しい。
日本航空の経営破綻、景気低迷の影響による旅客数の減少など、
航空業界には暗い話題が飛び交う。
「空の改革」は、日本経済が活力を取り戻すための
重要な要素の1つ。
新しい滑走路の建設は、改革のほんの一部、
着実に進む準備を見て、なんだか勇気づけられる気持ちがした。
http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/expedition/expedition/exp100302.html
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