2010年4月5日月曜日

「施設介護重視を」4割 8割が公費上げ要検討 認知症、独居増加が影響 47市区長アンケート

(2010年3月26日 共同通信社)

4月で介護保険制度がスタートして10年を迎え、
47都道府県庁所在の市区長を対象にした共同通信アンケートで、
札幌、山形、長野、奈良、鹿児島など4割に当たる18市長が、
国が力を入れる在宅介護よりも、特別養護老人ホームなど
施設介護を当面重視するべきだ、と答えている。

介護費用を補うため、公費割合の引き上げの検討が必要とした
回答は8割近く。

施設介護は、在宅サービスに比べ、建築費などの整備費用が
膨らむため、自治体は慎重とされてきたが、
施設待機者や独居高齢者増加に伴うニーズに応えるには
やむを得ないとする自治体トップの考え。

アンケートは、2~3月にかけて実施。
46道府県庁所在の市長と、東京都新宿区長から回答。

当面の対策で、「特養など施設系サービスの充実を重視」を選んだ
18市長の多くは、独居高齢者や認知症高齢者が増え続けると、
「在宅介護が困難になる」といった理由。

施設に入れないケースが増え、「家族の介護負担の軽減が必要」
施設不足が顕著な傾向が、大都市などで続いている。

「訪問や通所など在宅系サービス重視」を選んだのは、
ほぼ半数の23市区長で、
「地域で自宅に住み続けることを希望する人が多い」という理由。
6市長は無回答。

制度を維持していく上で検討すべき課題(複数回答)は、
「現在50%の公費負担割合の引き上げなど」が最多の36市区長。
「保険料徴収対象年齢の拡大」が17市長、
「1割から2割など利用者負担の見直し」が16市長、
「軽度者など給付対象者の絞り込み」が10市長。

介護保険制度全体について、ほぼ全員が「評価」、「ある程度評価」。
「在宅介護を望む声に応えたい」、
「家族負担軽減には施設介護が必要」-。
在宅重視を掲げる介護保険制度の理念と現実の板挟みに、
悩む姿が浮かび上がる。

在宅重視では、「多くの人が住み慣れた地域や家庭での生活を希望」
(熊谷俊人・千葉市長)など数多く、
「保険料への影響を考えると、施設系サービスを大きく増やすことは困難」
(目片信・大津市長)。

施設重視で目立つのは、「単身高齢者や高齢者のみ世帯、
認知症高齢者世帯の増加で、在宅介護が困難な世帯が増加」
(市川昭男・山形市長)、
「施設入所の待機者が多く、家族の介護負担の軽減も必要」
(鷲沢正一・長野市長)という意見。

高齢者の負担軽減策として、「これ以上の負担を求めるのは限界。
国庫負担の引き上げなどの制度改正が必要」(穂積志・秋田市長)、
「公費負担の増額など低所得者への配慮を」(谷藤裕明・盛岡市長)、
「新たな財源確保を早急に検討すべき」(翁長雄志・那覇市長)。

介護職の給与引き上げのため、介護報酬を7%引き上げる
民主党の方針について、賛成は2割、7割が「どちらとも言えない」。
「介護職員の処遇は向上させるべきだが、報酬引き上げは
利用者負担も増やし、職員給与と別に検討してほしい」
(松浦正敬・松江市長)など慎重意見が多かった。

厚生労働省で、介護保険制度を担当する山井和則政務官は、
2012年度の次期制度改正に向けた「介護ビジョン」を、
参院選前の6月に策定する方針。

ビジョンでは、老人ホームなど施設サービスよりも、
自宅への訪問介護など在宅サービスの拡充を重視する考え。
「夜間も、ヘルパーらがきめ細かく訪問する
『24時間365日巡回型サービス』を構築する」

山井政務官は、介護保険の現状について、
「(家族の負担を減らす)『介護の社会化』という原点から
外れてきてしまっている。
サービスを選択する余地はないし、現場の職員も
さまざまな制約に縛られている」

「施設の増設を望む声が高まっているが、
在宅サービスを手厚くすれば、その声は減っていく。
費用も、在宅のほうが安く済む」

高齢化で増え続ける給付費の財源に関して、
「保険料やサービス利用時の負担は、どうしても増える」
「予算を使い切れていないサービスは、保険給付の対象から
外したり縮小する」、歳出抑制にも取り組む。

前政権で検討された要介護度が軽い人への
家事援助サービス削減について、
「予防的な意味があり必要」と、削らない方針を表明。
保険料の徴収年齢を、現在の「40歳以上」から
引き下げることについても、否定的な考えを示した。

※介護保険制度

介護の社会化を目的に、2000年度施行。
40歳以上が保険料を支払い、要介護認定を受けた
65歳以上が原則、介護サービスを利用。
利用者負担は、介護費用の原則10%、
介護費用から利用者負担を除いたものが給付費。
この50%を国、都道府県、市町村が負担、
残りの50%を保険料で賄う。

要介護認定者は、09年4月末で約468万人、
00年4月末の約218万人から2倍以上に増加。
自己負担を含めた総費用は、7兆円超。
3年ごとに制度改正が行われ、次は12年度に予定。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/3/26/118010/

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