(2010年3月31日 読売新聞)
高齢者が認知症になったとき、自動車の運転を
やめさせるための家族向けマニュアルを、
厚生労働省の研究班が作成。
移動の代替手段や、運転以外の生きがいを
考えてあげることが大切。
道路交通法では、認知症と判断されれば、
運転免許の取り消しや停止の対象。
昨年6月から、75歳以上の高齢者が免許更新時、
認知機能の検査を受けることも義務づけ。
自らの判断で、免許を返納することもできる。
自動車の運転をやめることに抵抗を感じる高齢者も多い。
家族も、本人の行動を制限することに罪悪感があり、
説得に消極的な場合がある。
マニュアルには、参考となる実際の事例を掲載。
初期のアルツハイマー病と診断された70歳代前半の男性は、
運転中に行き先を忘れたり、車庫入れに失敗したりし、
医師から運転中止を勧められた。
自損事故も起こしたが、男性は「運転は生きがい。
運転できないなら、死んだ方がいい」、かたくなに運転中止を拒否。
家族が運転したり、地域の移動支援サービスを利用して
タクシーを使うようにさせたところ、次第に運転機会が減り、
本人も自分の意思で運転をやめた。
マニュアルでは、代わりの移動手段をさがすことや、
趣味の講座などで、運転以外に楽しみとなるものを
見つけることをアドバイス。
移動支援には、NPOなどが有償で行う送迎サービスや、
自治体が高齢者らのタクシー代の一部を補助するサービスなど。
地域によって内容が異なるため、
自治体の高齢者担当課で確認する必要。
運転中止がうまくいきそうもない場合は、家族が車に同乗し、
〈1〉センターラインを越える
〈2〉路側帯に乗り上げる
〈3〉車庫入れに失敗する
〈4〉ふだん通らない道に出ると、急に迷ってしまう
〈5〉ふだん通らない道に出ると、パニック状態になる
〈6〉車間距離が短くなる--
などの問題がないかメモにして、主治医や警察、
免許センターに相談することを勧めている。
患者が、運転中止を約束したことを忘れる場合も。
「あなたは、もの忘れが始まっていて、
安全に運転することが難しくなっています。
この場合、運転を続けることは危険であると、
法律でも定められています」などの文書を
主治医に書いてもらい、目につくところに張っておくのも効果的。
患者が運転したいと言い出したら、
「主治医の先生に言われて、運転はしないと約束したでしょう」と説得。
研究班の推計では、運転免許を保有する認知症患者の数は
約30万人に上る。
研究班の代表で、「国立長寿医療センター」長寿政策・在宅医療
研究部長の荒井由美子さんは、
「頭ごなしに運転をやめてと言っても、本人が納得しない場合が多い。
長年続けていた運転を中止することに、
温かい言葉をかけてねぎらい、車なしでも自立した生活ができる
環境を整えてあげてほしい」と呼びかける。
マニュアル:http://www.nils.go.jp/department/dgp/index-dgp-j.htm
◆運転を中止させるためのアドバイス(マニュアルから抜粋)
■週末の買い物など、家族が一緒に出かける工夫を。
一人暮らし世帯では、隣人らに移動の援助を依頼。
移動支援サービスなどの有無は、市区町村の窓口に尋ねる。
■「鍵隠し」、「車隠し」は最後の手段。
本人の興奮や被害妄想を悪化させ、逆効果になることも。
■運転中止後は、デイサービス・デイケアの利用、
趣味の活動を取り入れる。
■認知症の場合、自動車の代わりに電動車いすや自転車を
利用することは、事故の危険が高く、すすめられない。
なるべく公共交通機関などの利用。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/1/118379/
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