(2010年4月2日 毎日新聞社)
今年は、日本でのビタミン発見からちょうど100年。
体内で十分な量を合成できず、欠乏すると健康障害を起こすことで
知られるが、最近は骨粗しょう症や生活習慣病の予防効果に注目。
バターやキクラゲ、魚類などに多く含まれるビタミンD。
腸でのカルシウム吸収を助け、骨の形成に関与するため、
欠乏すれば骨軟化症などの石灰化障害を起こす。
京都女子大の田中清教授(臨床栄養学)は、
「1980年代以降、血液中のビタミンD濃度が測れるようになり、
欠乏に至らない軽度の不足で、骨が折れやすくなる
骨粗しょう症が起きることが分かってきた」
欧米の研究では、血液1ml当たりのビタミンD20ng未満が目安。
その濃度を確保するため、どれくらい摂取する必要か?
骨粗しょう症は高齢者に多く、田中教授は高齢者施設の入所者を
対象に、ビタミンDの摂取量と、血中の濃度を調べた。
その結果、5ug摂取しただけでは、血中のビタミンD濃度は
十分に上昇せず、サケ一切れに含まれるビタミンDに当たる
20ug摂取することで、1ml当たり19ngまで上昇。
田中教授は、「日本人を対象に大規模な介入調査を行い、
必要な量がどの程度なのか、科学的に明らかにする」
緑色野菜や海藻、納豆などに多く含まれ、肝臓で血液凝固因子を
活性化させるビタミンKが、骨に存在するたんぱく質の働きに関係。
ビタミンKの場合も、摂取量によっては骨で不足するケースが起こる。
小腸で吸収されたビタミンKは、肝臓を経て骨に送られる。
消化吸収力の低下した病気の人を対象にした田中教授の研究で、
肝臓で足りていたビタミンKが、骨では不足。
ビタミンKが、肝臓で使われてしまうことが理由。
田中教授は、「健康な成人なら、1日当たり250ug摂取、量的には十分。
高齢者や病気の人は、納豆などを積極的に食べたほうがよい」
ホウレンソウなどの緑黄色野菜に多く含まれる
ビタミンB群の一種の葉酸。
欠乏すると貧血を起こすほか、妊婦では胎児に二分脊椎症などの
障害が起きるとして、摂取が呼びかけられている。
女子栄養大の香川靖雄副学長(人体栄養学)は、
「脳卒中などのリスクを抑えるためには、今以上の摂取が必要」
香川副学長によると、海外の研究では、
葉酸の血液中濃度が増すと、脳卒中や心筋梗塞のリスクを示す
アミノ酸、ホモシステインの値が減る。
世界52カ国では、小麦などの穀類に葉酸を添加し、
葉酸摂取量を増やす政策をとっている。
98年、穀類の葉酸強化を導入した米国では、
99年以降脳卒中死亡率が低下。
厚生労働省が生活習慣病予防のための基礎的データとして
まとめた「日本人の食事摂取基準(2010年版)」は、
18歳以上の男女の葉酸の推奨量を
1日当たり240ug(妊婦は480ug)。
推奨量を一律に増やすことに、慎重な意見はあるが、
香川副学長は、同400ugに上げるべきだと主張。
女子栄養大では、地元の埼玉県坂戸市と共同で、
葉酸摂取量を増やすプロジェクトを06年から始め、
葉酸を添加した食パンなどを開発。
◇日本で発見から100年 海外より1年早く
ビタミンの発見には、日本人研究者が関係。
1910年、東京帝国大の農芸化学者、
鈴木梅太郎(1874~1943年)が、米ぬかから抽出した物質に、
かっけ予防効果があることを発見。
この物質を、「アベリ酸(後にオリザニン)」、
同年12月13日の東京化学会例会で発表。
これが、現在のビタミンB1。
論文も発表、日本語だったため国際的に認知されなかった。
11年、ポーランド人医師フンクが、同様の物質を米ぬかから抽出、
12年、生命(vital)に必要な化合物アミン(amine)という
意味から、ビタミン(vitamine)と名付けた。
その後、アミンと構造が異なるビタミンも見つかったため、
「vitamin」とつづりを変えた用語が定着。
社団法人ビタミン協会は、12月13日を「ビタミンの日」。
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■ビタミンDを多く含む食品
キクラゲ(1グラム) 4.4
サケ(60グラム) 19.2
ウナギかば焼き(100グラム) 19.0
サンマ(60グラム) 11.4
ヒラメ(60グラム) 10.8
イサキ(60グラム) 9.0
タチウオ(60グラム) 8.4
カレイ(60グラム) 7.8
メカジキ(60グラム) 6.6
なまり節(30グラム) 6.3
■ビタミンKを多く含む食品
卵(50グラム) 7
納豆(50グラム) 300
ホウレンソウ(80グラム) 216
小松菜(80グラム) 168
ニラ(50グラム) 90
ブロッコリー(50グラム) 80
サニーレタス(10グラム) 16
キャベツ(50グラム) 39
カットワカメ(1グラム) 16
ノリ(0.5グラム) 2
※含有量の単位はマイクログラム
(日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン06年版」引用)
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/2/118442/
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