(2010年4月2日 共同通信社)
自閉症者と定型発達者(健常者)の懸け橋になりたい-。
そんな夢を持つ重い自閉症の女性が、宮城学院女子大を卒業、
中学から10年間付き添った母親とともに学位記を手にした。
今後は、執筆や講演を通じて、
自閉症が広く理解されるよう活動、大学院進学にも挑戦。
仙台市の渡辺美穂さん(22)は、大学で心理学を専攻。
卒業論文では、自閉症の人の視覚について研究、
健常者とものの見え方の違いがあることをテーマに論じた。
自閉症は、他人との意思疎通が不得意などの特徴がある障害。
重い自閉症で、大学を卒業する人は少ない。
美穂さんは、発達障害の子を持つ親などを前に講演。
「あ...う...」。
マイクを通して、かすかに聞こえる声。
「一人一人に合う支援方法が見つかれば、
楽しい学校生活が送れます」。
傍らに寄り添う母親の久美子さん(52)が、一音一音うなずき、
確かめるように"通訳"した。
美穂さんは、言葉の発音がうまくできない障害も伴うため、
会話には久美子さんの協力が必要。
美穂さんが小学1年生のころ、音読の練習をするうちに、
久美子さんは美穂さん独特の発音を覚えた。
小学校では、特殊学級(当時)に入ったが、
紙に線を引く練習ばかり。
突然教室を飛び出す「野性児」だったという美穂さんは、
「勉強がしたかった」と振り返る。
美穂さんは、誰かが少しでも体に触れていると安心し、
作文も勉強もできたが、「当時は学校も信じなかった」(久美子さん)。
4年生のある日。
補助教員がふと体に触れてみると、
美穂さんが「プールが楽しかった」と書き始めた。
学校側は、健常児と同じように勉強を教え始め、
5年生から全科目で通常学級に通った。
公立中学には支援体制がなく、私立の宮城学院中学に入学。
補助教員がいなかったことなどから、久美子さんは以後、
同じキャンパスにある大学まで授業に付き添った。
久美子さんは、「本当は、学校などに支援者がいるのがベスト」
としながら、「本人の意思を尊重することが大切。
やりたいことをやらせてくれた周囲に感謝したい」
美穂さんは、「他人の気持ちを察するのが苦手なわたしたちは、
多くの誤解を生んでいる。
自閉症とは何かを、明るく伝えていきたい」。
久美子さんの言葉を通じて、美穂さんが力強く語った。
※自閉症
他人とのコミュニケーションが困難だったり、興味や活動範囲が
狭かったりするなどの特徴がある発達障害。
先天的な脳の機能障害に起因する、と考えられている。
個人差が大きく、健常者との間に明確な境界を設けることは難しい。
国連は、毎年4月2日を世界自閉症啓発デーとし、
日本では2~8日を発達障害啓発週間。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/4/2/118452/
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