(読売 3月27日)
最高学府も、学習環境の整備に乗り出した。
北海道函館市郊外にある、公立はこだて未来大学。
複雑系科学科4年の杉山和裕さん(23)がゼミの最中、
卒業論文の体裁に苦労していると、困った顔を見せた。
指導する美馬のゆり教授(49)は、「TeX(テフ=数式、表などを
清書するのに便利なソフトウエア)を入れたほうがいい」と助言、
方法を詳しく知らない杉山さんは戸惑う。
近くにいてやり取りを耳にした4年の男子学生が寄ってきて、
「インストールは難しくないよ」と杉山さんに声を掛けた。
具体的な方法を教わった杉山さんは、
「心強かったし、ありがたかった」と、安堵の表情。
同大では、授業やゼミで受講生以外の学生や教員が
首を突っ込むのは、珍しいことではない。
部屋の外で様子を見ていた学生が、「面白そうだ」と入ってくることも。
偶発的な出会いを誘うように、校舎が設計されている。
ゼミが行われていたのは、スタジオと呼ばれる天井高18mの
巨大な空間の一角。
5層のひな壇状で、各階に簡単な仕切りで囲われた
4年生用のスペースや机やイスなどがある。
ひな壇の下部は、ガラス越しに教員の研究室が入る。
5階から見下ろすと、数百人がパソコンに向かったり、
議論したりする様子が一望でき、壮観。
4年生の田中真依さん(22)は、「オープンな造りなので、
通りすがりに『今、どんな調子?』とか、気軽に話しかけやすい」
授業も、所々で行われる。
2000年、開学した同大は、システム情報科学部に2学科、
情報、デザイン、複雑系知能が主な研究領域。
情報アーキテクチャ学科の木村健一教授(52)は、
「既存の学問領域が狭まっている、という問題意識がある」
合同ゼミの開催で、「出会い」を演出。
スタジオは、こうした学びの共同性を象徴し、
美馬教授は、「一斉講義型も含め、様々な環境を提供して
多様な学びを保証することが大事」
東京大学駒場キャンパスに、07年開設された
「駒場アクティブラーニングスタジオ」(KALS)は、
自由にレイアウトを変えられるのが特徴。
米マサチューセッツ工科大学などを参考。
室内には、まが玉形の机が置かれ、横に並べると
講義形式に対応するが、三つを組み合わせれば円形になり、
グループ活動に向く。
前後左右にプロジェクターが設置、タブレット型パソコンも40台配備。
KALSのデザインを担当した東大情報学環の
山内祐平准教授(42)は、「通常の講義室では、
教員が空間に縛られるが、ここは教室が教員に合わせて変わる」
英語で書いた文章を批評し合う授業などで使われ、
コミュニケーション力や交渉力の養成に役立てたい。
目指す教育の理念を、まなびやに投影する試みは、
大学でも確実に進んでいる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100327-OYT8T00217.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿