2010年4月3日土曜日

谷中に歴史の趣を訪ね1年の福を願う

(日経 2010-01-05)

正月に寺社を巡拝して、1年間の福を願う七福神巡り。
歴史が残る町の散策は、正月休みでなまった
体をほぐすのにちょうどいい。
台東区観光ボランティアガイドの高橋桂介代表(75)の案内で、
東京都内で最古といわれる谷中七福神を回った。

・約50人が登録する台東区観光ボランティアガイドは、
 年間1万人以上を無料で案内。
・長安寺隣の松寿庵の「七福神そば」は、7種の具入りで700円。
 正月は、1日約80杯の注文。
・谷中銀座商店街は、毎月1、15日に全店で1割引きの特売。
 30年以上続く恒例行事。

谷中七福神は、台東、北、荒川の3区にまたがる約5kmのコース。
「田端から歩き始めれば、参拝後に上野で買い物や食事ができる」
田端駅から福禄寿をまつる東覚寺に向かう。

寺に着いたら、七福神の姿が描かれた版画(1枚1000円)を買おう。
各寺で200円納めれば、御朱印を押してもらえる。

七福神には、長寿、富財などの御利益があり、
いわば「開運スタンプラリー」。
七福神の公開と御朱印は期間限定で、今年は1月10日まで。

東覚寺で見逃せないのが、赤い紙を全身に張られた「赤紙仁王」。
体の悪い人が、患部と同じ場所に赤紙を張れば治る、
と信じられている。

民家が立ち並ぶ細い道を約15分歩くと、恵比寿の青雲寺、
道沿いに進むと布袋の修性院に着く。
高さ2mの布袋像は、口を開けて笑った顔が福々しい。

寄り道で、修性院脇の富士見坂を上る。
「七福神巡りをし、富士山も拝めたら最高に縁起がいい」と高橋さん。
通りがかりの女性が、「今朝はきれいに見えましたよ」。

活気ある谷中銀座商店街に続く道を横切って進むと、
寿老人の長安寺に到着。
歩き始めてから約1時間、寒さは厳しいが、体はポカポカ。

著名人が数多く眠る谷中霊園の突き当たりが、
毘沙門天をまつる天王寺。

幸田露伴の小説のモデルになった五重塔があったが、
1957年の火事で焼失。
今は、柵で囲まれた更地が残るのみ。

大黒天の護国院まで約20分。
正月以外は非公開の七福神が多いが、護国院の大黒天は
年間通してお参りできる。
上野動物園の脇を抜けて15分ほど歩くと、ゴールの不忍池弁天堂。
参道には、縁日が並びにぎやか。

「七福神おみくじ」を引くと、結果は吉。
今年もいい年でありますように。
田端駅から4駅分を歩いて、約2時間半。
「谷中をすべて見ようと思ったら、3日はかかる」(高橋さん)。
途中に気になる場所があったら、次の機会にゆっくり訪ねよう。

◆取材を終えて

谷中は、坂の町という印象が強いが、谷中七福神は尾根に沿って
歩くコースなので、意外と上り下りがなく歩きやすい。
谷中には80以上の寺があり、寺と寺の間に昔ながらの
民家が軒を連ねる。
歩いていると、江戸時代にタイムスリップした感覚。

最近は、古民家を改装したカフェや雑貨店が増え、
散策中に退屈することはなかった。
コースの途中、NHKドラマ「ひまわり」の舞台になった
谷中銀座商店街がある。
徳川慶喜ら歴史上の人物が眠る谷中霊園など、見どころが多い。

長さ37mの築地塀がある観音寺は、
「谷中で最も江戸の風情を残している」と高橋桂介さんが一押し。
時間の関係でじっくり見られず、後ろ髪を引かれる思いをした。

道沿いには、老舗の料理店や和菓子店が多く、食べ歩きも楽しい。
昼食で食べたそば店、松寿庵の「七福神そば」は、
おかみの橋本暁美さんが「谷中名物に」と、26年前に考案。
恵比寿を表すエビ、弁財天をイメージした紅白かまぼこなど
7種類の具入りで食べ応えがある。
700円の価格は、「7にこだわったため、値上げできない」と
販売開始から据え置いたまま。
住民に、今も息づく江戸の粋を感じた。

http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/expedition/expedition/exp100105.html

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