(日経 2010-03-18)
電波の有効利用で、経済の活性化を促す議論が熱を帯びてきた。
政府は、今国会で放送と通信の融合に向けた
放送法改正案の成立を目指す。
総務省の内藤正光副大臣は、7月をめどに
「ホワイトスペース特区」を創設。
放送目的の電波を、通信などにも利用可能にする
仕組みの検討が、本格的に始まる。
新たな電波政策は、斬新なITサービスの登場を促し、
日本経済を浮揚させる「埋蔵金」となるか?
「驚いた。画期的だ」
「電波の有効利用に関する国際シンポジウム」で、
内藤副大臣がホワイトスペース特区の早期設置を言明、
会場の推進派からは評価する声が上がった。
ホワイトスペースとは、テレビ局向けに割り当てられている
電波の周波数のうち、普段は使われていないすき間帯域。
本来、電波の混信を防ぐための「緩衝帯」のようなもの。
技術の進歩で、放送や通信での利用に道が開けつつある。
テレビ用の周波数は、VHFとUHFのアナログ放送用に
計62チャンネル分が割り当てられているが、
実際に使われているのは、首都圏でも10前後にすぎない。
通信業界や一部の学者らは、2011年7月の放送完全デジタル化を
機に、ホワイトスペースの“解放”を訴えていた。
総務省の姿勢が、ホワイトスペース活用に傾斜し始めたのは、
民主党への政権交代後。
「新たな電波の活用ビジョンに関する検討チーム」を立ちあげ、
ホワイトスペース問題を俎上に上げた。
年明け後、与党も一段と積極的に。
政権に、「成長戦略」を求める声が強まるなか、
巨額の財政出動を伴わず、内需をてこ入れする具体策として、
電波政策に注目。
総務省は、ホワイトスペースの活用案を募集。
計54の企業などから、103件の提案。
地域限定の携帯端末向け地上デジタル放送である
「エリアワンセグ」や、「デジタルサイネージ」と呼ぶ電子看板への
データ送信など、新規ビジネスのアイデアが含まれる。
米国では、大学構内のインターネット接続など、
地方都市の無線通信の環境充実に、
ホワイトスペースを利用する動き。
日本の放送界は、「ホワイトスペースなど存在しない」と主張。
すき間帯域を、空想上の「埋蔵金」扱いするなど、
慎重姿勢を崩していなかった。
ここに来て、軟化の兆し。
広告市場の低迷など、悪化する地方局の経営を、
電波の積極利用に転じることで打開しようとの議論が浮上。
放送法などの改正により、1つの免許で放送と通信サービスの
双方を展開できる“融合免許”が、制度として盛り込まれる方向。
慶大の中村伊知哉教授は、「地方局が深夜、余った電波で
通信サービスを提供できるようになる」
技術的な課題解決も含め、すき間電波の利用には曲折も予想。
米欧など、海外でも検討は進み、
電波の隠れた価値を顕在化させる動きは加速しそう。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt100317.html
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