2010年4月1日木曜日

インタビュー・環境戦略を語る:ブリヂストン・荒川詔四社長

(毎日 3月15日)

「走る、曲がる、止まる」という自動車の3大機能を
足元から支えているタイヤ。
世界最大手のメーカーであるブリヂストンは、
「ナノレベルから、世界を変える」を合言葉に、
性能アップのための研究開発を続けている。
自動車メーカーが繰り広げるエコカー開発競争に、
タイヤはどのように貢献できるのか?
ブリヂストンの環境戦略を、荒川詔四社長に聞いた。

--省エネ時代のタイヤ開発にとって、大事なことは何か?

タイヤの性能は、走行時の抵抗(転がり抵抗)に左右される。
表面をツルツルにするほど抵抗がなくなり、燃費は向上。
停止性能は低下してしまう。
この両立が難しい。
素材であるゴムの配合率をどうするか、路面に接する
表面部分の溝(トレッドパターン)の最適な模様は何か。
その開発研究の成果が、今年1月に発表した
「エコピア」シリーズの最新型EX10。

--具体的な省エネ効果は?

従来品に比べ、「転がり抵抗」を25%低減。
ぬれた路面での制動距離は、14%も短くなった。
タイヤの場合、原材料から廃棄までのCO2全排出量のうち、
「自動車に装着して使用している段階」の排出量が87・0%。
転がり抵抗を抑えれば、使用段階のCO2が減るので、
EX10を従来品と置き換え、CO2を約10万トン削減。
これは、ブナの木に換算すれば、
約910万本の年間吸収量に匹敵。

--タイヤ業界でも、省エネ化の競争は激しい。

◆パンクをしても、一定距離は走行できる「ランフラットタイヤ」は、
スペアタイヤやジャッキの搭載を不要にし、
車体重量と燃費の軽減をもたらす。
従来は、乗り心地に問題があり、今はパンクに気付かないほど改良。
07年、買収した米バンダグ社の技術を活用し、
廃タイヤの再生にも積極的に取り組む。
エコピアシリーズを年内にも中国市場に投入し、
新興諸国のCO2削減につなげたい。

--スペアタイヤ不要だと販売減になり、経営上マイナスでは?

業界のリーダーとして、高い意識を持たなければならない。
目先の利益を考えていてはいけない。
昨年7月、「未来のすべての子供たちが、『安心』して
暮らしていくために」として、地球環境の保全をうたった
「環境宣言」も発表。

今ほどには、環境意識が高くはない20年ほど前から、
ブリヂストンはエコピアの開発に取り組んできた。
この伝統を糧に、技術革新に取り組む。
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◇あらかわ・しょうし

東京外大外国語学部卒、「文化活動にあこがれた」ことを
志望動機に68年入社。06年3月から現職。山形県出身。
誕生日が「タイヤの日」(4月8日)というのも奇縁。65歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/03/15/20100315ddm008020177000c.html

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