(読売 3月20日)
空き教室が再び学びの場になる。
教室に足を踏み入れると、屋根が付いた古民家の居間が現れた。
室内に家がある、不思議な感覚。
社会科の授業で昔の暮らしを学ぶ3年生は、
上履きを脱いで畳に上がり、「これ、何だろう?」と
興味深そうに古い足踏みミシンなどを指さしては、
その名前を紙に書き込んだ。
横浜市立俣野小学校は2005年、児童数の減少で
使わなくなった教室に、昭和初期の農家を再現。
地域の財産を残そうと、当時の校長が大工を招き、建ててもらった。
居間の中央に囲炉裏が据えられ、大正から昭和中期にかけ、
実際に使われたテレビや柱時計が置かれている。
後方のロッカーは、陳列棚に変わった。
教室は、「俣野ふるさと資料館」と名付けられた。
市郊外の俣野地区は、農業を営む家が多く、学校が呼びかけると、
約50人から数百点の民具や農具が集まった。
隣の空き教室にも、脱穀機や唐箕など、
使われなくなった農具が所狭しと並ぶ。
3年生が社会科の授業で使うほか、学習発表会では
古民家を舞台に劇を上演。
地域には、ほかにこうした施設はない。
西田義明副校長は、「資料館がなければ、
ビデオや写真を見て学ぶしかない。
俣野の伝統文化や暮らしぶりを実体験でき、いい学習になっている」
同小の児童は、1983年度を境に減り続け、
現在はピーク時の4分の1以下の176人。
その結果、20以上の教室が空いた。
文部科学省によると、子どもの数の減少により、昨年5月時点で
全国の公立小中学校の余裕教室は、約6万1000室。
99・1%が、少人数教育などに活用、
学校以外の施設に変わるケースも。
福岡市早良区にある次郎丸中学校。
子育て支援に力を入れる市は、空いていた1階の2教室を改装、
親子交流施設「次郎丸中子どもプラザ」を開設。
平日は、保育士を含む3人のスタッフが常駐、
1日平均20~25組の親子が訪れる。
室内には、カーテンで区切られる授乳スペースも。
周辺には同様の施設がなく、週1、2回利用する
波多江奈穂美さん(44)が、「寒い日は公園で遊ぶことも
できないので、とても助かる」、利用者に好評。
昼になると、生徒が窓越しに赤ちゃんをあやしたり、
抱っこしたりする姿も。
「幼い子と接することで、自分の過去を振り返り、
現在や未来について考えを深めるきっかけになる」と
毛利一孝校長(59)。
来年度は、利用している母親を講師として招き、
子育ての喜びや悩みを話してもらったり、職場体験を
子どもプラザで行ったりすることも計画。
空き教室は、部活動などでたまに使っていたこともあり、
当初、学校側は開設に賛成していなかったが、
現在では「生徒の情操教育に非常にプラス」との評価。
現状を逆手に取った知恵と工夫が、机上では得られない
経験を、子どもたちに与えている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100320-OYT8T00198.htm
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