2010年4月2日金曜日

変わる校舎(4)空き教室に古民家 再現

(読売 3月20日)

空き教室が再び学びの場になる。

教室に足を踏み入れると、屋根が付いた古民家の居間が現れた。
室内に家がある、不思議な感覚。
社会科の授業で昔の暮らしを学ぶ3年生は、
上履きを脱いで畳に上がり、「これ、何だろう?」と
興味深そうに古い足踏みミシンなどを指さしては、
その名前を紙に書き込んだ。

横浜市立俣野小学校は2005年、児童数の減少で
使わなくなった教室に、昭和初期の農家を再現。
地域の財産を残そうと、当時の校長が大工を招き、建ててもらった。
居間の中央に囲炉裏が据えられ、大正から昭和中期にかけ、
実際に使われたテレビや柱時計が置かれている。
後方のロッカーは、陳列棚に変わった。
教室は、「俣野ふるさと資料館」と名付けられた。

市郊外の俣野地区は、農業を営む家が多く、学校が呼びかけると、
約50人から数百点の民具や農具が集まった。
隣の空き教室にも、脱穀機や唐箕など、
使われなくなった農具が所狭しと並ぶ。
3年生が社会科の授業で使うほか、学習発表会では
古民家を舞台に劇を上演。

地域には、ほかにこうした施設はない。
西田義明副校長は、「資料館がなければ、
ビデオや写真を見て学ぶしかない。
俣野の伝統文化や暮らしぶりを実体験でき、いい学習になっている」

同小の児童は、1983年度を境に減り続け、
現在はピーク時の4分の1以下の176人。
その結果、20以上の教室が空いた。
文部科学省によると、子どもの数の減少により、昨年5月時点で
全国の公立小中学校の余裕教室は、約6万1000室。
99・1%が、少人数教育などに活用、
学校以外の施設に変わるケースも。

福岡市早良区にある次郎丸中学校。
子育て支援に力を入れる市は、空いていた1階の2教室を改装、
親子交流施設「次郎丸中子どもプラザ」を開設。
平日は、保育士を含む3人のスタッフが常駐、
1日平均20~25組の親子が訪れる。
室内には、カーテンで区切られる授乳スペースも。

周辺には同様の施設がなく、週1、2回利用する
波多江奈穂美さん(44)が、「寒い日は公園で遊ぶことも
できないので、とても助かる」、利用者に好評。

昼になると、生徒が窓越しに赤ちゃんをあやしたり、
抱っこしたりする姿も。
「幼い子と接することで、自分の過去を振り返り、
現在や未来について考えを深めるきっかけになる」と
毛利一孝校長(59)。

来年度は、利用している母親を講師として招き、
子育ての喜びや悩みを話してもらったり、職場体験を
子どもプラザで行ったりすることも計画。
空き教室は、部活動などでたまに使っていたこともあり、
当初、学校側は開設に賛成していなかったが、
現在では「生徒の情操教育に非常にプラス」との評価。

現状を逆手に取った知恵と工夫が、机上では得られない
経験を、子どもたちに与えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100320-OYT8T00198.htm

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