(読売 3月17日)
「見える教室」が、教師の授業力を高める。
授業が終わる直前、3年1組担任の斉藤豪教諭(39)が、
隣の3年3組担任の多田拓也教諭(28)に、
歩み寄って声を掛けた。
「ネタを、5個はなかなか思いつかん。
少ない子には、質を良くしていくように確認しよう」
多田教諭は、「はい」と応じた。
福岡市立博多小学校で、2クラスの児童が取り組んでいたのは、
博多弁でテンポよく掛け合う「博多にわか」のネタ作り。
地域の伝統芸能を学ぶ、総合学習の一環。
斉藤教諭は17年目の中堅、多田教諭は1年目の新任。
この時間の授業内容は同じで、授業の冒頭、2人は
「五つはネタを作る」と、課題を子どもたちに伝えた。
児童は、フリールームの壁に張り出された博多弁の一覧表を参考に
2人1組で頭をひねったが、かなり難しそうな様子。
作品の出来栄えを見て回りながら、そう感じ取った斉藤教諭は、
多田教諭に、授業のまとめ方をアドバイス。
この時を含め、斉藤教諭は45分間の授業中に3回、
多田教諭と細かな打ち合わせを行った。
こうした意思疎通を可能にするカギは、
1組と3組の教室の位置関係。
同小は、教室と廊下の間に壁がなく、両クラスは横並びではないため、
互いに教室の様子が見通せる。
「博多小に来て、こんなに人の授業が見えるのかと驚いた」と斉藤教諭。
多田教諭は、「授業が先に進んでいる斉藤先生の板書を見て、
自分の授業に生かすことは多い」、
「盗んでやろうという気持ちはある」と授業力向上に意欲を燃やす。
2001年、新校舎が完成した同小には、
「見える授業」を象徴するもう一つの存在。
職員室の代わりに、先生たちの拠点として各階の中央にある
教師コーナー。
3、4年の教室がある3階では、教師コーナーから3年2組と4年1組の
教室内がよく見え、多田教諭は、「教材研究の合間に、
ほかの先生の授業を見ることもできる」
裏を返せば、各階で中央寄りの2教室は、
最も同僚から見られやすい教室。
同小は、6学年のうち4学年で、この場所を一番の若手や
初めて同小に赴任した教員のクラスとし、
学校全体で指導する姿勢を鮮明に。
市教委から拠点校指導教員に任命されている
同小の坂田麻由美教諭(48)は、
「学校によっては、初任者の教室が孤立していることも。
特に(窓を閉め切る)冬場は、教室内のことが分からなくなりやすい」
こうした懸念を、同小は構造と人員配置で払拭している。
授業力は、教育の質に直結する。
大阪府教委は08年、指導力のある小中学校の教員の授業を撮影し、
動画をインターネットで各校に配信する取り組みを始めた。
団塊の世代の大量退職もあり、現場の危機感は強い。
見て見られる機会が多いほど、授業力を磨くチャンスに。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100317-OYT8T00314.htm
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