2010年9月11日土曜日

インサイド:ユース五輪 未来への礎/1 関心低い国内メディア

(毎日 8月31日)

IOCが新設した、若者の祭典「第1回ユース五輪夏季大会」が、
13日間の日程を終え、26日に閉幕。

勝敗よりも、選手の教育、文化交流に軸足を置いた大会は、
勝利至上主義やドーピング(禁止薬物使用)のまん延など、
現在の五輪が抱える課題に向き合う一歩でもある。

若者のスポーツ離れを食い止め、五輪本来の価値を取り戻せるか?
未来のオリンピアンを育てるユース五輪の実情に迫った。

閉会式で、IOCのジャック・ロゲ会長は選手たちに、
誇らしげに語りかけた。
「君たちはスポーツと教育、文化交流を融合する挑戦を見事に遂行した。
単なる勝者ではなく、真のチャンピオンになるとは、
どういうことかを学んだ。
君たちは今、『若きオリンピアン』の称号を手にした

◆ロゲ会長「大成功」

大会組織委員会は、約32万人が観戦、約1750人の
報道関係者が取材に訪れた。

開閉会式のチケットはすぐに売り切れ、陸上、競泳、体操など
人気競技の会場は盛況。
スポンサー獲得も77社にのぼり、ロゲ会長は
「予想をはるかに上回る成功」とアピール。

IOCのジルベール・フェリ五輪統括部長は、
18年以降の(夏季)大会には、少なくとも17カ国が開催に
関心を示している。
米国オリンピック委員会とも話をした」

米国は、今大会の参加辞退をちらつかせていた。
選手を閉幕まで選手村に滞在させ、文化・教育プログラムに
参加させるIOCの方針に対し、他の国際大会との日程調整から
難色を示していたのだ。

その米国の態度の変化は、すべてが手探り状態だった
大会の評価の変化を物語っていた。

本格的に競技がスタートした15日。
トライアスロン女子で、歴史的な大会第1号金メダルを獲得したのは、
佐藤優香(18)=トーシンパートナーズ・チームケンズ=。

大会中は、地元市民や外国の選手から握手やサイン攻めにあい、
テレビの取材も相次いだ。
佐藤は、「スーパースターになった気分」と照れ笑い。

◆日本はTV中継もなし

こうした現地の盛り上がりは、日本にはあまり伝わらなかった。
テレビでは、開閉会式の様子を含め、大会中の中継はなし。
IOCによると、166カ国・地域がテレビ放映権を取得、
日本だけが空欄のまま。

従来の五輪は、NHKと民放で構成するジャパンコンソーシアム(JC)が
IOCと契約、今回は放映権獲得に乗り出さなかった。

NHKの広報担当者は、「8月は全国高校野球や中学、高校の
総合体育大会の中継があり、総合的に判断。
ニュース番組の中では、状況に応じて報道するように努めている」

大会前に各局を回って、テレビ中継を依頼した
日本オリンピック委員会の竹田恒和会長は、
「いろいろと頼みに行ったが、残念。
知名度がない『これからの選手』は、ネームバリューがなくて
難しいと言われた」と渋い顔。

五輪評論家の伊藤公さんは、「結局、日本はトップ選手の
勝ち負けしか報道しない。基準を改める時期にきているのでは」

ユース五輪が閉幕した26日、国内では文部科学省が
今後のスポーツ政策の方向性を示す「スポーツ立国戦略」を発表。
五輪でのメダル獲得目標を掲げ、「国際競技大会などにおける
日本人選手の活躍は、国民の意識を高揚させ、
社会全体の活力となる」などと記している。
依然、メダル獲得が国家の存在感を高めるという視点は変わっていない。

ロゲ会長は、選手村を訪れた際、
「私は、国家間のメダル争いに興味はない。
国と国との争いではなく、個人が競い合う大会なんだ」。

ユース五輪の理念を浸透させるには、まだ時間が必要だ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100831ddm035050081000c.html

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