2010年9月6日月曜日

インタビュー・環境戦略を語る:住友化学・廣瀬博社長

(毎日 8月23日)

世界的な総合化学メーカーとして、国内外で幅広い活動を
展開する住友化学。
電気自動車の電池や省エネテレビの素材、断熱材など、
生活に不可欠な最先端の素材を手がけつつ、
環境改善にも大きく貢献することが期待。
廣瀬博社長に、環境戦略を聞いた。

--環境に対する基本理念は?

◆住友化学の生い立ちは、愛媛県新居浜の別子銅山の
公害処理業務に、端を発している。
銅の精錬の際、亜硫酸ガスが発生するが、これを化学的に処理し、
硫安や過リン酸石灰など肥料を製造したのが始まり。

肥料を製造して煙害を解決し、農作物の増産にも寄与するという、
一石二鳥の解決策を見いだした。
環境保全は、住友化学のDNA。
原点でもあり、会社を経営するうえでの基本。

--環境関連で力を入れている分野は?

◆リチウムイオン2次電池や燃料電池、太陽電池、
省燃費タイヤの材料など、多くの事業部門がある。
もはや、ひとつの技術だけで何かをつくり出すのは難しい。
さまざまな要素、技術を組み合わせて新しいものをつくる。
「ハイブリッドケミストリー(混合型化学技術)」と言っているが、
各事業部門の知恵や技術を組み合わせ、
良いものをつくっていこう、というスタンスが基本。

--有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)にも力を入れている。

◆われわれが手がけているのは、高分子有機EL。
これは、電気を光に替える技術で、この技術を使った
薄膜の太陽電池も開発中。
太陽電池に使うフィルムも、石油化学部門から出てきている。

高分子有機ELは、省エネだけでなく、3Dでの残像もなくなるなど
画質も優れ、視野角も広い。
照明もテレビも、フィルム化が進めば、生活空間は大きく変わる。
われわれは、生活空間革命を目指している。

--化学の力がさらに重要に。

◆「cLCA(カーボンライフサイクルアナリシス)」といって、
製造から廃棄までの各ステージで、環境への負荷が
どれだけ軽減されているかを評価する手法がある。
断熱材は製造するのに、1のエネルギーを使っても、
廃棄までに4の省エネ効果をもたらす。
分析も行いながら、研究テーマに優先順位をつけて取り組んでいる。

化学は、なくてはならない事業。
高純度のアルミでテレビや半導体がつくられ、
石油化学ではミクロン単位でフィルムも製造。
それぞれの技術が融合し、製品化に結びついている。

--取引先の企業も環境意識は高まっているか?

◆温室効果ガスだけではなく、化学品もより環境に優しいものを
求めたり、製造過程でCO2削減に貢献できるようなものを
使いたいという機運が強まっている。
グリーンなサプライチェーンへの協力を進めていきたい。
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◇ひろせ・ひろし

神戸大経営学部卒。67年住友化学工業(現住友化学)入社。
総務部長を経て、01年に取締役。09年4月から現職。
岡山県出身。66歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/08/23/20100823ddm008020020000c.html

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