2010年9月10日金曜日

医療通訳 基準作り急務、外国人増え 高まるニーズ…京都

(2010年8月27日 読売新聞)

医療通訳を養成、派遣しているNPO法人
「多文化共生センターきょうと」(京都市)が、他県のNPO法人、
財団法人、医療関係者などと協力し、共通して活用できる
通訳基準作りを進めている。

日本で暮らす外国人の増加に伴い、医療通訳のニーズが
高まっているが、医療通訳に公的な資格制度はなく、
各団体などが独自に養成しているのが実情。
基準を「目安」にすることで、
通訳の質やレベルの向上を図るのが狙い。

医療通訳は、日本語が不自由な外国人が医療機関で受診する際、
病状や治療の説明などを通訳し、意思疎通を助ける。
人材育成は、民間団体などが養成講座や学習会を開くなどして
独自に取り組んでいるほか、一部の語学学校も行っている。

京都市内では、「医療通訳を考える全国会議」が開かれた。
「多文化共生センターきょうと」とNPO法人
「多言語社会リソースかながわ」が、
事前に作成した基準の素案を提示。

素案では、求められる知識として、患者の国や地域ごとの宗教や文化、
医療制度の違い、病気になった時の人間の心理などを列挙。
医療面では、体の器官や、一般的な病気と症状に関する用語、
医師や看護師など、従事者の種類や役割についての知識を
身につけることとした。

倫理面でも、患者情報の守秘義務の徹底や、通訳するに際して
自分の価値観や主観を交えないことなどを求める内容。

参加したNPO法人や国際交流協会、病院など11団体からは、
「基準があるとやりやすい」、「通訳をしてもらう時に
ニュアンスが違うことがあり、最低ラインは必要」など、
基準作りに賛同する意見が大勢を占めた。

今後、関係者で素案をベースに必要な修正を加え、
10月中旬頃に共通基準を策定。
多文化共生センターきょうとのホームページなどで公表する予定。

同センターの重野亜久里代表は、
「個人的に通訳する人や、通訳を活用する病院関係者なども
基準を活用してくれれば。
医療通訳が、職業として認知されるための活動も続けたい

法務省によると、2009年末の外国人登録者数は219万人。
この年、旅行なども含め、入国した外国人は約758万人。
外国の富裕層に、日本の医療、検診と旅行をセットで提供する
「医療ツーリズム」も注目、医療通訳の必要性は高まっている。

医療通訳士協議会長の中村安秀・大阪大教授は、
「今後、医療ツーリズムが普及すれば、
旅行者専門の医療通訳者が生まれ、地域の人たちをケアする
通訳者とダブルスタンダード(二重基準)になるおそれも。
前もって、統一的な基準を作っておくべきだ」と提言。

医療通訳は、誤訳があると医療事故につながりかねず、
大きな責任を担っているが、多くがボランティアに
支えられているのが現状。
医療通訳の派遣や養成を支援する自治体は、
今はまだ神奈川県や京都市などに限られ、
資格制度の創設を含め、国や自治体のさらなる支援が求められている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/27/124614/

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