2010年9月10日金曜日

インタビュー・環境戦略を語る:三菱商事・小島信明常務執行役員

(毎日 9月6日)

三菱商事は、総合商社として地球環境事業に力を入れている。
12年度までの中期経営計画では、
地球環境事業を全社的な重点戦略分野と定め、
3年間で約3000億円を投資。
新設された地球環境事業開発部門最高経営責任者(CEO)、
小島信明常務執行役員に話を聞いた。

--重点戦略分野に定めた背景は?

◆世界の人口は、50年に90億人に達すると言われ、
特に途上国でエネルギー資源や水、電気の需要が増えるが、
そのインフラの整備と環境保護の両立が課題。

インフラ整備や新エネルギー事業は、安定した収益基盤として
将来の成長が期待、持続可能な社会の実現に貢献できる。
成果が出るまでに時間がかかる事業も多いので、
中長期的な視点で取り組むことに。

--特に力を入れる分野は?

◆太陽熱、太陽光、風力発電などの新エネルギー事業、水事業、
リチウムイオン電池事業など。
4月、GSユアサなどと共同で、電気自動車向け
リチウムイオン電池工場の増設を決定。
7月、タイで世界最大級となる7・3万kwの発電容量を持つ
太陽光発電事業に参画することを決めた。

--環境事業における商社の強みとは?

◆三菱商事は、世界各国に約200の拠点があり、
多くの事業パートナーがいる。
その蓄積を基盤とし、世界各国で原料調達から設備の運営・保守まで
一貫してできるのが強み。
太陽光発電では、パネルなど部材の調達、設置場所の選定、
設備の建設、運営までかかわっている。
リチウムイオン電池事業では、リチウム資源権益の取得から参画。

--温室効果ガスの排出量取引にも参画している。

単なる排出量の売買ではなく、京都議定書の発効前から
温室効果ガスの削減につながるプロジェクト開発に力を入れる。
中国山東省のフロン処理事業など、世界各国に社員が散って
企業や工場に温室効果ガス削減に必要な設備や技術を紹介、
導入して排出量の登録などを行う。

京都議定書に基づいて、国連が認定するクリーン開発メカニズム(CDM)
の排出量の登録件数は48件。
削減量は仏、イタリア企業に次いで世界3位。

--今後の戦略は?

◆10年以内に、いくつかの新エネルギーは
化石燃料より低コストになる。
蓄電技術の進歩や大量生産、スマートグリッドの発達で、
大きな変化が起こってくる。

太陽光や風力の発電能力は、地理的要因に左右され、
条件の良い土地は限られている。
土地の確保を含め、今後も世界各地で、多数のプロジェクトに
取り組んでいきたい。
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◇こじま・のぶあき

早稲田大法学部卒。74年、三菱商事入社。
イラン三菱商事社長、新エネルギー・環境事業本部長などを経て、
今年4月から現職。59歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/09/06/20100906ddm008020026000c.html

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