2010年9月11日土曜日

今も受け継ぐ慈愛の心 マザー・テレサ生誕百年

(2010年8月27日 共同通信社)

インド東部コルカタで、貧しい人々に献身し、
「スラムの聖女」と呼ばれた故マザー・テレサ。
26日、生誕100年を迎えた。

テレサが設立した、重体患者らが住む「死を待つ人の家」では、
穏やかな最期を迎えられるよう、テレサから受け継いだ
慈愛の心で、ボランティアが患者の世話を続けている。

「キー、キャー」。
死を待つ人の家で、悲鳴とも断末魔の声ともつかぬ大声が響いた。
ある老人が唯一動く右腕で、「こっちへ来い」と、
短期ボランティアを務める記者を呼んだ。
上半身を起こして、コップで水を飲ませると、
ほっとしたように横になって目を閉じた。

死を待つ人の家には男性約30人、女性約25人が、
病院のストレッチャーのような寝台に寝かされている。
土色の顔で、ぐったりして動かない老人。
文字通り全身、骨と皮にやせ細った男性。
世話役のカトリック教会のシスターたちは、
患者の病状を明かさないが、重体であることは一目瞭然。
路上で倒れていたり、家族から見放されたりした人々が運ばれてくる。

寝たきりのビシュワシュさんに頼まれて、腕や足をさする。
「患者は、他人に触れられていることで、孤独ではないと安心する」
長年、ボランティアを続けるアイルランド人男性が説明。

壁には、青い縁取りのある白いサリー姿のマザー・テレサの写真。
天井から、いくつもの白と青色の風船がつり下がる。
気温33度。ファンが回るが蒸し暑い。

インド人スタッフがひつぎを担架に乗せて、外に運び出した。
「別の棟で、誰かが死んだ」と患者のラムさん(42)が教えてくれた。
明日の命は分からぬ、死と隣り合わせの患者たち。

死を待つ人の家では、食事や用便、洗濯など患者たちの世話は
ボランティアが担っている。
40代のイタリア人女性は、夏休みの3週間をここで働く。
スロバキアの男子学生や台湾の女子学生の姿も。
東京都の男性教師、大塚圭さん(30)は、
「言葉が通じないので戸惑う」、手足の不自由な患者に食事をさせたり、
用便の始末を懸命に続けている。

死を待つ人の家を一歩出ると、路上にも横たわる老人や裸の子ども、
物ごいの人々。
街の様子は、テレサの生前とそれほど変わっていない。

旅行代理店経営のパラス・ドゥイベディさん(54)は、
「誰もがテレサのように献身できるわけではないが、
貧しい人に各自ができることしたらよいのでは」。

※マザー・テレサ

1910年8月26日、アルバニア人を両親として、
現在のマケドニア・スコピエに生まれる。
17歳の時、貧しい人々に一生をささげる決心をし、その後インドへ。
「貧しい人々の中でも、最も貧しい人たちに仕えるように」との
神の啓示を受け、インド女性の着る質素なサリー姿で、
コルカタのスラムで活動。
「死を待つ人の家」、「孤児の家」などをつくった。
修道会「神の愛の宣教者会」を設立、貧しい人々に献身する活動は、
インドから世界中に広まった。
79年、ノーベル平和賞。
97年9月に死去、インドで国葬が営まれた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/27/124586/

0 件のコメント: