2010年9月5日日曜日

専門家動員し健康維持 救出まで極限の4カ月 チリの落盤事故

(2010年8月26日 共同通信社)

南米チリ北部コピアポ近郊の鉱山で起きた落盤事故は、
地下に閉じ込められた労働者33人全員の生存が17日ぶりに確認、
世界を驚かせた。

救出には4カ月程度かかるとされ、精神的、肉体的な健康状態を
どのように維持していくかが重要な課題。
チリ政府は、専門家らを動員し細心のケアに取り組む。

▽地下へ飛ぶハト

「彼らは、(9月18日の独立)200周年には地上に戻れないだろうが、
クリスマスと新年にはわれわれと一緒にいることになる」
ピニェラ大統領は、救出までの時間を耐え忍ぶよう、家族らに訴えた。

大型ドリル機材を使って、救出用トンネルを掘る作業は、
今週末から始まる見通し。
最終的には直径約70cmのトンネルを掘り、
かごを降ろして一人ずつ引き上げる計画。

救出までの間、直径10cm余りの3本のトンネルで食料を供給し、
通信、通気を確保する。
食料や水、メッセージなどが詰まった長さ約1・6mのカプセルは、
「ハト」と呼ばれ、1時間かけてこのトンネルを通って地下に届く。

▽8本目のトンネル

事故が起きたのは、5日。
チリ人32人とボリビア人1人が閉じ込められた。
労働者たちは当初、通気孔から出る道を探ったが、
はしごがなく断念。
はしごの設置は、過去に同鉱山で事故が起きた際、
義務付けられたが、守られていなかった。

地上からは、地下避難所に向けて、ドリルによる掘削作業が続いた。
この作業は、鉱山の経営会社の地図が正確でなく、
7回にわたって失敗。
8本目のトンネルが避難所付近に届いたのは、22日だった。

この間、地下では、事故のあった時間帯の現場監督が、
限られた食料を配給制にするなど、労働者をまとめた。

掘削機で地下水を掘り出し、地下に取り残されたトラックの
バッテリーを使ってヘッドランプを充電。
ドリルが届いたとき、労働者らの体重は8~9kg減っていた。

▽極限を生きる

地下避難所は、約40平方メートルで小さなアパート程度。
労働者は、これにつながる約2kmのトンネル内を動き回れる。

地上では、医師や心理学の専門家が、4カ月の間、
極限状況に置かれる労働者の健康をどのように維持するか検討。
労働者らに大きな健康問題は確認されていないが、
1人は糖尿病の持病がある。

士気をくじかないため、労働者たちには、救出までに4カ月もの
時間がかかることは知らされていない。
家族らが書く手紙は、労働者の精神状態を乱すことがないよう、
専門家が事前に内容を確かめる。

チリ政府は、トランプやドミノなど、時間つぶし対策も講じる予定。
地下の状況が宇宙船や潜水艦内と似ているとして、
NASAやチリ海軍に、心身の健康管理について協力を求めている。

1972年、アンデス山中で起きた航空機墜落事故で、
生存者が死者の肉を食べて70日余り生き延びた
「アンデスの奇跡」を経験したウルグアイ人医師は、
ラジオのインタビューで、「人間は、困難な時を生きなければならないとき、
並外れた力を出せる」とエールを送った。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/8/26/124551/

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