(読売 11月19日)
実技が得意な体育の補助役を、全小学校に派遣する自治体がある。
「今日は江原先生がいるから、チャンスですよ」
さいたま市立与野南小学校の校庭の鉄棒の前で、
教師歴10年の伊藤希教諭が3年生に語りかけた。
紹介された江原俊さん(22)は、埼玉大学教育学部の4年生。
昨年度から、さいたま市の「小学校体育授業サポーター」として週に1度、
同小で体育の授業の補助。
江原さんは、逆上がりの練習を始めた子供たちに、
「もっとおなかを鉄棒にくっつけて」、「おへそを見て」と声をかける。
寄り添って児童のひざや腰を下から支えもする。
伊藤教諭に促されて、足かけ前回りを2回、3回と連続して披露。
その姿に、驚きのまなざしを送る児童たちのそばで、
伊藤教諭が「江原先生の腕、伸びてますね」と解説。
江原さんに逆上がりを手伝ってもらった児童は、
「もうちょっとでできそうになって、うれしかった」と笑顔を見せる。
江原さんも、「子供たちが笑顔で運動しているとうれしくなる」と楽しそう。
さいたま市が、「体育サポーター」を導入したのは昨年度から。
101の市立小全校に、ボランティアの大学生や、派遣会社を通して採用した
体育系大学出身者などを週1~2度派遣。
昨年6月から10校で試行し、9月からは全校に派遣。
今年度予算は約4600万円を計上。
市教育委員会の藤田昌一主任指導主事は、
「よい手本を見せてくれる、はつらつとした体育の先生に教わることで、
子供たちは運動にあこがれを持って意欲的に取り組んでくれるはず」と期待。
サポーターをどう活用するかは学校に任せているため、
必ずしも「体育が苦手だから」、「年配だから」という理由で
サポーターが入るわけではないようだ。
全校導入の背景には、小学校教員の高齢化がある。
さいたま市の教師の年齢構成は2007年度で、50代が4割、40代以上で6割超、
20代は2割にすぎない。
「ベテランの先生は授業は上手だが、自分で見本を見せるのが難しくなってくる。
子供の補助がつらいという声も聞こえる。
サポーターに目の前で実技をやってもらうと、子供の意欲も違ってくる」と藤田さん。
教師がけがで跳び箱の見本を見せられないというような場合も。
20年前に足のじん帯を痛めた別の小学校の女性教諭(55)は、
「子供が技のイメージを持つには、ビデオで見せるよりも
実際に目の前で見せる方がわかりやすい。
サポーターに演技をしてもらいながら、ポイントを説明することもできる」と利点を強調。
市教委には、休み時間にもサポーターに教わりに来る児童がいるなど、
子供が意欲を喚起されているという報告も。
いずれは、体力向上という数字になって表れるだろう。
◆50代が倍増
文部科学省の学校教員統計調査(3年ごとに実施)によると、
全国の国公私立小学校教員のうち、50代は2007年度で34.2%。
1998年度の18.3%から2倍近く増。
公立小の都道府県別では、50代の割合が最多なのは奈良県の47.8%。
和歌山県(47.5%)、埼玉県(46.8%)は3番目に多い。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081119-OYT8T00182.htm
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