(読売 11月20日)
体を動かすことを最大限、心がける授業がある。
授業開始を告げるチャイムが鳴る前に、29人の児童全員が縄跳びを始めた。
愛知県知多市立旭南小学校の体育館。5時限目の4年生の授業。
次はかけ声とともに走り、軽快な音楽に乗ってスキップ。
体を反らせてブリッジ。ここまで約8分。
「サーキット」と呼ばれる準備運動の中身は、同小オリジナル。
児童は動きっぱなしで、1分あたりの心拍数が120回まで上がる。
始業のチャイムが鳴った時には、児童は汗だくだった。
担任の中野香菜教諭(24)が、「はい、マットを出して」と言って笛を吹くと、
児童は一斉に駆けだし、6グループに分かれて30秒とたたないうちにマットが敷かれた。
事前に説明を受けており、前転や側転の練習も、指示がないまま始まる。
体育館の壁には、それぞれの運動の方法を示した紙も張ってあり、児童が参考に。
45分の授業で、児童が中野教諭の周りに集まったのは、
始業から20分後と最後の2回だけだった。
「どうしたら児童が立ち止まらないかを、第一に考えている」と中野教諭。
子供たちが動き回る体育の立役者は、知多市教委の鰐部忠夫指導員(61)。
同市立新知小学校で校長を務めていた5年前、
「体育の授業で、体を動かす時間が短すぎる。これでは体力づくりができない」
体育座りをして教師の指示を聞き、技のお手本を見る時間が長い。
調べてみると、授業1コマの間に、一人ひとりが動いているのは5~10分だけ。
鰐部さんは教師たちに、話す時間を減らすよう指示。
ストップウオッチで動いた時間を測定させるようにし、歩数計も導入。
グラウンドを使う種目だと、ジャングルジムや鉄棒、ハードルを使って
準備運動代わりにした。
こうした取り組みで、3年目の2005年度には、
学年別・男女別の体力測定結果96項目のうち、全国平均を上回る項目が69に。
06年度からは、市内の全小学校10校で「体育での動く時間増加」運動が広がり、
教師の間で「運動量の確保」が合言葉となった。
児童が動く時間は、45分の授業時間のうち25分に。
市全体でも、効果は数字に表れた。
学年別・男女別に50メートル走や立ち幅跳び、反復横跳びなど
60項目の成績をみると、愛知県平均を上回った項目が、
04年の28項目から07年には53項目に増えた。
「動き回ることが、体力増加につながったのは間違いない」と
知多市の授業に助言してきた中京女子大の時安和行准教授(体育学)が太鼓判。
「ただ、体力に重点が置かれると、技能の習得がおろそかになりがちだ。
技やフォームを子供同士で互いに指摘し合うといった工夫が必要に」
基礎となる体力がついたからこそ、その先の目標が見えてきたようだ。
◆子供の体力
文部科学省の体力・運動能力調査で、1985年度が小中高校生の体力のピーク。
その後低下したが、この10年間、中高生で若干の回復傾向に。
13歳男子の50メートル走は、85年度が7秒90、98年度が8秒00、
2007年度が7秒94。
文科省では、「練習すれば上がるものは上がってきているが、
ピーク時とは大きな隔たりがある」
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081120-OYT8T00233.htm
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