2008年11月26日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/284 武道の必修化/2

(毎日 11月22日)

東京体育館の会議室に、「スポーツ9条の会」のメンバーが集まった。
この日の学習会のテーマは、「中学校体育の武道必修化について考える」。
議論は3時間近くに及んだ。

憲法改正に反対する護憲派知識人が組織した「九条の会」に連動し、
スポーツを通じた平和運動を推進しようと、
大学教授や元選手らが4年前に設立したのが「スポーツ9条の会」。

参加者に配布された資料には、昨年2月に日本武道協議会が
安倍晋三首相(当時)に提出した「嘆願書」があった。
武道関係10団体が加盟する協議会の会長名は、塩川正十郎・元衆院議員(同)。
中学、高校の武道必修化を求める内容。

「倫理道徳の退廃が著しく、自他の尊厳や義務感の欠如等、
人として歩むべき『道』の規範意識低下は、民族の存立基軸すら危うくしつつある」、
「武道は、国民精神の根源、武士道精神の神髄を基調に、人間陶冶、
世界平和を希求し、日本人としての自覚と使命感に立つ有為の人材を育成する道」

戦前の旧制中学校では、1931年に武道が必修化され、
戦時中の国民学校でも「体錬科武道」が必修科目。
当時の資料には、教育関係者が「日本人に日本人としての魂を植え付ける」と
語った記述もある。
武道が、民族意識の高揚や「忠君愛国」の精神と結びつけられた
過去は否定できない。

体育史を研究する武蔵野美術大の青沼裕之教授は、
「戦前、武道の必修化は他のスポーツにも影響を与え、
たとえば野球も武道的に扱われた。
それが国家統制につながり、戦争に突入していった歴史は
重大視しなければならない」

スポーツ9条の会が、武道必修化にすべて反対しているわけではない。
若者の価値観が、多様化する現代で武道の教育効果に期待する声も強い。
思いやりの心や相手を敬う精神。参加者からこんな声が飛んだ。

「武道を利用しようとする政治的意図と、文化としての武道との間には
ギャップがあるのではないか」。
その溝をどう埋めるか?
武道教育の大きな課題だ。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

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