(読売 11月21日)
コツを教える教師の創意工夫を、映像ソフトの進化が支える。
そろいのジャージー姿の女子生徒たちが、くすくすと笑い声を漏らしながら、
興味深そうにパソコン画面をのぞき込む。
盛岡市立下小路中学校の体育館で、3年生の授業。
10月から週3回、12回続けてきたマット運動は、この日が最後。
生徒たちが見ているのは、次々と登場する自分たちの姿。
マットの上で逆立ちをして背中から倒れ、
くるっとでんぐり返しをする「倒立前転」の映像。
「腕や足、『6時10分』はどうなっているかな、よく見てね」。
岡田幸一教諭(39)は、各生徒の“食いつき”を確認するように声をかける。
「6時10分」は、倒立から次の動作に移る前の体のフォームを、
時計の針の位置で示している。
ちなみに、倒立を始める最初の動作は「グリコのポーズ」と呼ばれ、
体育の教師の間でよく使われる。
両手を上に伸ばし、片方の足をひざから曲げる姿を、
菓子のキャラクターからとっている。
岡田教諭は、運動に意欲的な子とそうでない子の二極化を心配してきた。
できない子は、できる子の身体感覚を容易には理解できず、どんどん差が開く。
特に、地味で、失敗した時の格好悪さが目立つマット運動は、
苦手な子に人気がない。
「限られた50分間の授業で、できない子に、
頭でできるコツをわかってもらうのが近道」だと、
視覚に訴える掲示物や人形、ビデオなどを使って説明してきた。
そんな岡田教諭の工夫を支える最新装置が、映像ソフトの「スポーツミラー」。
同中に赴任した今年から取り入れた。
撮影した映像を、巻き戻しなしですぐ見られるだけでなく、分解写真にもでき、
自分の体のフォームを確認するのに便利。
この日も、個々の生徒の分解写真を一人ひとりに配った。
近くの子と見比べながら「まじキレイやねー」、「猿みたい」、「どれどれ」と大騒ぎ。
「足の伸びや、足を上げる時の勢いなど、
ここを直せば次にやれるってわかる気がする」と生徒の一人、千葉花穂さん(15)。
このクラスでは、千葉さんを含め、16人中3人は全く倒立ができなかったが、
生徒同士の支え合いもあって、全員ができるように。
「生徒が『自分はできない』と思い込んでいても、教師は評価していたり、
逆に生徒が『演技は完璧』と自信満々でも、教師から見ると問題点が多かったりと、
演技の評価が分かれることがよくある。
このソフトで、画像をすぐ確認するとそうした食い違いがなく、
生徒にも理解しやすく、コツを覚えやすい」
ソフトの開発に協力した小沢治夫・東海大体育学部教授(59)が力説。
生徒が自分の動きを客観的にとらえることができる映像が、
「次」への自信につながる。
◆スポーツミラー
マット運動、体操、跳び箱、柔道、ゴルフなどのスポーツで、
連続した動きを場面ごとにチェックできるソフト。
開発したのは、筑波大生が起業した株式会社ニューフォレスター(つくば市)。
2005年11月の発売開始以降、小中高校を中心に約400本売れている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081121-OYT8T00373.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿