2008年11月27日木曜日

「体育」を見直す(4)フォーム撮影 すぐ確認

(読売 11月21日)

コツを教える教師の創意工夫を、映像ソフトの進化が支える。

そろいのジャージー姿の女子生徒たちが、くすくすと笑い声を漏らしながら、
興味深そうにパソコン画面をのぞき込む。
盛岡市立下小路中学校の体育館で、3年生の授業。
10月から週3回、12回続けてきたマット運動は、この日が最後。
生徒たちが見ているのは、次々と登場する自分たちの姿。
マットの上で逆立ちをして背中から倒れ、
くるっとでんぐり返しをする「倒立前転」の映像。

「腕や足、『6時10分』はどうなっているかな、よく見てね」。
岡田幸一教諭(39)は、各生徒の“食いつき”を確認するように声をかける。
「6時10分」は、倒立から次の動作に移る前の体のフォームを、
時計の針の位置で示している。
ちなみに、倒立を始める最初の動作は「グリコのポーズ」と呼ばれ、
体育の教師の間でよく使われる。
両手を上に伸ばし、片方の足をひざから曲げる姿を、
菓子のキャラクターからとっている。

岡田教諭は、運動に意欲的な子とそうでない子の二極化を心配してきた。
できない子は、できる子の身体感覚を容易には理解できず、どんどん差が開く。
特に、地味で、失敗した時の格好悪さが目立つマット運動は、
苦手な子に人気がない。
「限られた50分間の授業で、できない子に、
頭でできるコツをわかってもらうのが近道」だと、
視覚に訴える掲示物や人形、ビデオなどを使って説明してきた。

そんな岡田教諭の工夫を支える最新装置が、映像ソフトの「スポーツミラー」。
同中に赴任した今年から取り入れた。

撮影した映像を、巻き戻しなしですぐ見られるだけでなく、分解写真にもでき、
自分の体のフォームを確認するのに便利。
この日も、個々の生徒の分解写真を一人ひとりに配った。
近くの子と見比べながら「まじキレイやねー」、「猿みたい」、「どれどれ」と大騒ぎ。

「足の伸びや、足を上げる時の勢いなど、
ここを直せば次にやれるってわかる気がする」と生徒の一人、千葉花穂さん(15)。
このクラスでは、千葉さんを含め、16人中3人は全く倒立ができなかったが、
生徒同士の支え合いもあって、全員ができるように。

「生徒が『自分はできない』と思い込んでいても、教師は評価していたり、
逆に生徒が『演技は完璧』と自信満々でも、教師から見ると問題点が多かったりと、
演技の評価が分かれることがよくある。
このソフトで、画像をすぐ確認するとそうした食い違いがなく、
生徒にも理解しやすく、コツを覚えやすい」
ソフトの開発に協力した小沢治夫・東海大体育学部教授(59)が力説。

生徒が自分の動きを客観的にとらえることができる映像が、
「次」への自信につながる。

◆スポーツミラー

マット運動、体操、跳び箱、柔道、ゴルフなどのスポーツで、
連続した動きを場面ごとにチェックできるソフト。
開発したのは、筑波大生が起業した株式会社ニューフォレスター(つくば市)。
2005年11月の発売開始以降、小中高校を中心に約400本売れている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081121-OYT8T00373.htm

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