(読売 11月25日)
生徒が親しみやすい音楽で、楽しく体力作りを進める学校がある。
「レッツ・ゴー(いくぞ)」、「ザッツ・グー(いいぞ、その調子だ)」。
ビートの効いた音楽に合わせた英語のかけ声が、矢継ぎ早に、
体育館のスピーカーから流れてきた。
生徒たちは歓声を上げ、スクリーンの映像を見ながら、
キック、パンチ、スクワットと基本動作をこなしていく。
北海道教育大付属釧路中学校3年の体育は、
日本に一大ブームを巻き起こした米国の軍隊式エクササイズ
「ビリーズブートキャンプ」で始まった。10分間の基礎体力作りの時間。
次に、ヒップホップ系の音楽が流れ、6、7人ずつに分かれたダンス。
生徒たちは、1か月半でマスターした基本ステップを組み合わせ、
「こうやると格好良いよ」、「動きが合ってないよ」と、
見栄えのするフォーメーションを話し合っては試す。
「大きく踊るのがコツだぞ」と、生徒に声をかけた佐藤毅主幹教諭(45)は、
ヒップホップダンス入門の市販DVDを購入して、独学で学んだ。
ダンスは元々、苦手だという。
佐藤教諭が、体育に「ビリー」を取り入れたのは昨年4月。
持久力や柔軟性を身に着けながら、筋力強化も図れる。
中学校の新学習指導要領で必修になるダンスの方は、先月から始めた。
話題性のある「ビリー」と、若者に人気のヒップホップ音楽なら、
生徒もなじみやすい。
ダンスも相当な運動量になるが、仲間と一つのものを作る達成感が
厳しさを補ってくれる。
同校の生徒は、7年前から体力低下が目立ち始めた。
4年前の文部科学省の体力・運動能力調査では、
全8種目中7種目が全国平均以下に。
特に男子の1500メートル走など、持久力の落ち込みが激しい。
生徒は市全域から集まる。
7割の生徒が、保護者の車かバスで通学。
2年前の調査で、同校生徒が1日に歩く歩数は、
東京の中学生の半分の6000、7000歩だったという数字も。
「都会の子に比べて歩かない。どうしても運動不足になるようだ」と
室山俊美副校長(50)。
このことへの危機感が、体育を見直す契機に。
「体育科の体力作りといえば、腕立て伏せや腹筋などの『個人競技』。
これでは面白くないし、続かない。
楽しんで体力を高める授業を目指している」と佐藤教諭。
「みんなと工夫して、踊ることの楽しさを強く感じた」(3年男子)、
「1人では苦労するけど、みんなと一緒にやればとても効率がいい」(3年女子)。
授業に対する生徒たちの反応は上々。
卒業後もスポーツで自身の生活改善、健康維持が図れるような生徒を
育てるのも目標の一つ。
「心拍数120~130で最低20分間の運動をすると、
皮下脂肪が初めて燃焼し始める」といった知識を授ける座学の時間も設ける。
「生涯にわたって、運動に親しむ能力を育てる」。
そんな新指導要領の考え方に沿った取り組みが、ひと足先に進められている。
◆ダンスに3類型
中学校の指導要領では、ダンスを
〈1〉動きに変化をつけて即興的に表現する「創作ダンス」、
〈2〉音楽に合わせて特徴的なステップで踊る「フォークダンス」、
〈3〉変化のある動きを組み合わせて、全身で踊る「現代的なリズムのダンス」
に分けている。
地域や学校の実態に応じて、その他のダンスを履修させることもできる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081125-OYT8T00217.htm
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