2008年11月28日金曜日

「体育」を見直す(5)武道必修 手薄な環境

(読売 11月22日)

中学校での武道必修化の狙いと課題は何か。

「着座! 黙想!」
山梨大学付属中学校の格技場に、飯塚誠吾教諭(35)の声が響いた。
柔道着姿の3年生男子19人と女子12人が、正座して目を閉じる。
飯塚教諭の「やめ、礼」の合図で、一同がお辞儀をし、授業が始まった。

同中では、男女とも1、2年で柔道が必修、2年ではダンスも必修。
3年では、秋から柔道かダンスを選ぶ。
柔道を選ぶ女子も、ダンスを選ぶ男子も少なくない。

得意技は大腰という石井瑛里香さん(14)は、
「1、2年の授業で初めて柔道をやってはまった。
試合で一本が決まった時の喜びが何とも言えない。闘志が燃える」と笑顔を見せる。
一方、体育館で行われたダンスの授業では、男子20人、女子28人が
班ごとに分かれ、ポップ、ロック、テクノ音楽などにあわせて、振りを確認。

学習指導要領の改定で、中学生は2012年度から、
1年か2年で武道とダンスを必ず学ぶことに。
器械運動、陸上競技、水泳、球技は以前から必修だが、
現行の指導要領は武道とダンスはどちらかの選択。
以前、男女が別々に学んでいた名残がある。

同中が必修化したのは、16年前。
「大人になって、趣味として楽しめるスポーツを選ばせる時、
経験したことがないスポーツは選びづらい。
学校ではさまざまな種目を経験させ、基礎を固めさせたい」と飯塚教諭。
指導要領改定の狙いも同様。

武道必修化に向けた課題の一つが、指導者養成。
和歌山県教育委員会は、必修化の指導要領が3月に告示されてから初めて、
剣道の実技指導者養成講習会を開いた。
これまで剣道を教えたことのない教師らに、最低限の基礎を教えるため。
10人が講師から剣道の心得を聞いた後、足の運び方や竹刀の使い方、
防具をつける練習をし、1日目の午後には打ち込みを始めた。

県教委は、今年度の講習会を柔剣道で各1回開催するにあたり、
県内の中学校約150校、高校約60校に参加を呼びかけた。
参加者は柔道も25人だけだったが、
県教委健康体育課の坂口雅紀指導主事(39)は、
「今回講習に参加した教師は意欲的で、不案内な武道の習得も早かった」と
安心した様子を見せる。

体育教師は、大学の教職課程で一通りの武道は学んでいる。
現在でも、県内公立中学で男子42%、女子29%に武道の授業を実施。
しかし、必修化までに、礼儀作法、防具の着装から、技の教育、
安全性の確保まで含めた習得が間に合うか。2日程度の講習で十分なのか。
来年度以降の計画は、まだ手探り状態。
剣道の場合、授業に必要な防具や竹刀の数も圧倒的に不足。

武道場の整備状況は、和歌山県内の公立中学校で昨年、14%と全国最低。
柔道の授業をしようとすると、体育館で授業のたびに畳を敷く学校が多数出てしまう。

子供に様々なスポーツを経験させるには、環境の整備が欠かせない。

◆武道場を持つ公立中47%

文部科学省の調査では、2007年5月現在、全国の公立中学校に
武道場(柔道場、剣道場、柔剣道場、弓道場、相撲場、なぎなた場)の
いずれかがあるのは47%。
文科省は09年度予算の概算要求で、公立中学校に武道場整備の補助として
約48億円(215校分の半額)を計上。
13年度には、整備率を70%にするのが目標。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081122-OYT8T00221.htm

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