(読売 11月22日)
中学校での武道必修化の狙いと課題は何か。
「着座! 黙想!」
山梨大学付属中学校の格技場に、飯塚誠吾教諭(35)の声が響いた。
柔道着姿の3年生男子19人と女子12人が、正座して目を閉じる。
飯塚教諭の「やめ、礼」の合図で、一同がお辞儀をし、授業が始まった。
同中では、男女とも1、2年で柔道が必修、2年ではダンスも必修。
3年では、秋から柔道かダンスを選ぶ。
柔道を選ぶ女子も、ダンスを選ぶ男子も少なくない。
得意技は大腰という石井瑛里香さん(14)は、
「1、2年の授業で初めて柔道をやってはまった。
試合で一本が決まった時の喜びが何とも言えない。闘志が燃える」と笑顔を見せる。
一方、体育館で行われたダンスの授業では、男子20人、女子28人が
班ごとに分かれ、ポップ、ロック、テクノ音楽などにあわせて、振りを確認。
学習指導要領の改定で、中学生は2012年度から、
1年か2年で武道とダンスを必ず学ぶことに。
器械運動、陸上競技、水泳、球技は以前から必修だが、
現行の指導要領は武道とダンスはどちらかの選択。
以前、男女が別々に学んでいた名残がある。
同中が必修化したのは、16年前。
「大人になって、趣味として楽しめるスポーツを選ばせる時、
経験したことがないスポーツは選びづらい。
学校ではさまざまな種目を経験させ、基礎を固めさせたい」と飯塚教諭。
指導要領改定の狙いも同様。
武道必修化に向けた課題の一つが、指導者養成。
和歌山県教育委員会は、必修化の指導要領が3月に告示されてから初めて、
剣道の実技指導者養成講習会を開いた。
これまで剣道を教えたことのない教師らに、最低限の基礎を教えるため。
10人が講師から剣道の心得を聞いた後、足の運び方や竹刀の使い方、
防具をつける練習をし、1日目の午後には打ち込みを始めた。
県教委は、今年度の講習会を柔剣道で各1回開催するにあたり、
県内の中学校約150校、高校約60校に参加を呼びかけた。
参加者は柔道も25人だけだったが、
県教委健康体育課の坂口雅紀指導主事(39)は、
「今回講習に参加した教師は意欲的で、不案内な武道の習得も早かった」と
安心した様子を見せる。
体育教師は、大学の教職課程で一通りの武道は学んでいる。
現在でも、県内公立中学で男子42%、女子29%に武道の授業を実施。
しかし、必修化までに、礼儀作法、防具の着装から、技の教育、
安全性の確保まで含めた習得が間に合うか。2日程度の講習で十分なのか。
来年度以降の計画は、まだ手探り状態。
剣道の場合、授業に必要な防具や竹刀の数も圧倒的に不足。
武道場の整備状況は、和歌山県内の公立中学校で昨年、14%と全国最低。
柔道の授業をしようとすると、体育館で授業のたびに畳を敷く学校が多数出てしまう。
子供に様々なスポーツを経験させるには、環境の整備が欠かせない。
◆武道場を持つ公立中47%
文部科学省の調査では、2007年5月現在、全国の公立中学校に
武道場(柔道場、剣道場、柔剣道場、弓道場、相撲場、なぎなた場)の
いずれかがあるのは47%。
文科省は09年度予算の概算要求で、公立中学校に武道場整備の補助として
約48億円(215校分の半額)を計上。
13年度には、整備率を70%にするのが目標。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081122-OYT8T00221.htm
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