2008年12月1日月曜日

もっと知りたいエコロジー:“緑の線路”を実現した、鹿児島市の路面電車

(毎日 11月28日)

緑の芝生の上を低床の路面電車が走る。
まるでヨーロッパのようなこの風景は、鹿児島市で撮ったもの。
国内では、初の本格的な緑化軌道。
軌道敷緑化整備事業を担当する鹿児島市公園緑化課に話をうかがった。
緑化軌道が誕生したきっかけは、
2004年に九州新幹線が一部開業したこと。
鹿児島中央駅との乗り継ぎを向上させるため、
市電を駅前広場に引き込むことに。
駅前広場の植栽との一体感が得られるよう、
約140メートルの区間を緑化。
面積にすると、わずか220平方メートルに過ぎなかったが、
施工後の市民意識調査できわめて高い評価を受けた。
緑化した軌道敷は、車道と比べて11.5度も路面温度が低かった。
景観的にも、ヒートアイランド現象の緩和にも効果があることが認められ、
鹿児島中央駅~鹿児島駅までの施工へと話が膨らんだ。

軌道敷の緑化は、そう簡単なものではなかった。
緊急車両などが軌道敷内に侵入する場合もあり、
車に踏まれて芝生が擦り切れたり、緑化面がへこんだりしない必要がある。
日当たりのいいところがほとんどなので、保水性のある地盤にする必要も。

問題の解決に貢献したのが、鹿児島県の工業技術センターと民間が
共同開発した「シラス緑化基盤」。
鹿児島県に多く堆積しているシラス(火山噴出物)とセメントを
混ぜ合わせて成形した厚さ8センチ×30センチ角のブロックで、
保水性と通気性を兼ね備えている。
緊急車両などに踏まれても、ビクともしない。
新素材が生まれ、軌道敷緑化整備事業は06年度から本格的にスタート。
現在は、「シラス緑化基盤」を敷き詰め、地域の土と特殊な土壌改良材を
ブレンドした「軌道敷緑化専用客土」を入れ、その上に芝生を張る。
芝生は高麗芝を品種改良し、温暖な気候も相まって、冬でも緑を保つ。

道路延長約3400メートル、面積約12500平方メートルの緑化が完了。
年間に7回ほどの芝刈りや、雨が少ない時期の水まき、肥料の散布、
除草などの作業が必要だが、軌道敷を緑化した効果は多大。

表面温度の低下が挙げられる。
施工前後にほぼ同一条件下で、起軌道敷内と中央分離帯の表面温度を
比較した結果、緑化後には軌道敷内で17~18度、
中央分離帯で24度も温度が低下した。
騒音の低減でも顕著な効果が認められている。
軌道緑化と同時に、レールを交換したり、枕木を木からコンクリートに
変更したりするなど、軌道改良を行った地点では、
電車が通過する際の最大騒音レベルが、施工前よりも9デシベル下がった。
軌道から約20メートル離れていた地点で聞こえていた音が、
3メートルまで近づかないと聞こえなくなったことに相当。

ヒートアイランド現象の緩和や、騒音の低減に加え、
緑化された軌道敷は目に優しく美しい。
緑化軌道を見慣れた後に未施工区間を見たら、
まるで違う時代、違う都市のように思えたほど。
鹿児島市では、2012年度までに道路と併用している残りの区間、
約5・5キロを整備する計画。
全線完成後には、約8・9キロの “緑の線路”が誕生。
線路敷を緑地に変えた鹿児島市の取り組みは、
各地でわき上がっている路面電車の復活案を、

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