2008年12月3日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/285 武道の必修化/3

(毎日 11月29日)

興味深いアンケート結果がある。
「剣道をやってみたい(続けたい)」と思う人の割合は、
部活動での経験者や全くの未経験者に比べ、
授業で剣道を経験した人が一番低い。
剣道の難しさや厳しさを知ったことで、
剣道に対するマイナスイメージを持ったのが理由。

剣道人口の減少に危機感を抱いた全国教育系大学剣道連盟研究部会は
93年、高校生と大学生を対象にした意識調査を行い、
計1万1846人から回答を得た。

剣道部の顧問を務める研究部会のメンバーにとって、
競技への入り口となるはずの授業が、
子どもたちを競技から遠ざけているのは予想外。

大阪教育大の太田順康准教授は、
「武道特有の礼儀や作法を教えるのは大事だが、
『黙って言うことを聞け』という態度では逆効果。
他のスポーツと同じように、体を動かすことの楽しさや喜びも
子どもたちに伝えなければ、道徳の授業と変わらない」

大教大4年の剣道部員、久保充世さん(21)は今秋、
中学校保健体育の教員試験に合格。
必修化を歓迎しながらも、「新しい学習指導要領には、
剣道の専門用語が使われている。
限られた授業時間の中で、自分たちも子どもたちに
しっかり教えることができるだろうか」。

同様の不安は、大阪府内の高校で保健体育を指導している
教員からも寄せられている。

文部科学省によると、武道の指導経験のある教員は
柔道82%、剣道54%、相撲17%。
12年度からの必修化に向け、指導者の養成は、武道場などの施設や、
用具の整備充実とともに急務。

野球やサッカーなどは経験がなくても、
テレビなどを通じて目に触れる機会が多く、イメージがつかみやすい。
それに対し、勝敗を争うだけではない武道は、
魅力が分かるまでに時間がかかる。

競技人口の拡大につながるのか、
武道嫌いの子どもたちを作り出すことになるのか。
必修化は、もろ刃の剣でもある。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

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