(共同通信社 2008年11月26日)
四日市市にある江戸時代の代官所跡で1999年、
18世紀末ごろのほぼ全形をとどめた精巧な木製入れ歯が出土。
当時の人々も、現在と同じような方法で老いを乗り越えようとしたようだ。
入れ歯は、焼き物やげたなど生活用品に交じって堀から見つかった。
上あご用で、奥行き5.5センチ、幅6.2センチ、高さ2センチ。
8本の歯が本物そっくりに削り出されている。
上あごに密着する部分は非常に薄く、わずか0.5ミリの所も。
材質は、ツゲ。
彫刻しやすいが割れにくくて肌触りも良く、入れ歯の材料に用いられた。
既婚の女性が塗ったお歯黒のように歯の部分が黒く、女性用とみられる。
一部がすり減っており、実用品だったよう。
科学分析の結果、お歯黒の成分は検出されなかった。
出来栄えは、これまで見つかった入れ歯の中でも「最高水準」。
江戸時代には既に専門の「入れ歯師」がおり、
木製入れ歯の製作技術は世界の最先端だったとされる。
発掘した三重県文化振興室の伊藤裕之主幹は、
「木を焼いて炭化させ、お歯黒の代わりにしたらしい。
木の性質を熟知した仏師がアルバイトで作ったのだろう」
国学者の本居宣長も入れ歯を作った。
その時の喜びを、短歌にして手紙に書き家族に送ったといい、
なかなか庶民の手が届くものではなかったらしい。
四日市市教委の葛山拓也学芸員は、
「持ち主はおしゃれな女性で、人前に出る時だけ使ったのではないか」と推測。
高価な品物なのに、なぜ堀に捨てられたのかは謎。
鑑定した名古屋市の「歯の博物館」前館長で、
歯科医師の山口晴久さんは、「高級武士か、裕福な商人でないと
作ることはできなかった。
捨てたのではなく、堀端でせき込むか、
くしゃみをして落としてしまったのかもしれない」と想像。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=83605
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