2008年12月1日月曜日

スーパー特区にiPS細胞医療応用プロジェクトなど

(サイエンスポータル 2008年11月20日)

「研究資金の統合的かつ効率的な運用」と
「開発段階からの薬事相談、承認審査の迅速化・質の向上」を
推進するための「先端医療開発特区」(スーパー特区)として、
政府は、24件の研究開発課題を採択、公表。

スーパーという名がついているのは、従来の「特区」のように
行政区域を特別扱いするのではなく、重視するのはテーマ、ということ。
先端医療開発という目的から言えば、当然の考え方だろう。

今回の特区選定の考え方や手順については、
「『先端医療開発特区』(スーパー特区)の創設について」の中で説明。
その中で、5つの重点分野が定められている。
「iPS細胞応用」、「再生医療」、「革新的な医療機器の開発」、
「革新的バイオ医薬品の開発」、「その他、国民保健に重要な治療・診断に用いる
医薬品・医療機器の国際的な共同研究開発(がん・循環器疾患・
精神神経疾患・難病等の重大疾病領域、希少疾病領域その他)」

今回スーパー特区として採択された中に、山中伸弥・京都大学教授を
代表者とする「iPS細胞医療応用加速化プロジェクト」が入った。
iPS細胞の特徴を生かした「新薬候補の開発」と、
細胞移植治療の臨床研究システム化を図り、
「臨床研究・治験を実施」という明確な最終目標。

「再生医療」分野で採択された岡野栄之・慶應義塾大学教授を代表者とする
「中枢神経の再生医療のための先端医療開発プロジェクト-脊髄損傷を中心に-」
に対しても、患者をはじめ期待は相当大きい。
交通事故などで脊髄に損傷を受け、下半身あるいは全身麻痺になった患者は多い。
しかし、長年ばく大な研究費を投入してきたといわれる米国なども、
これといった成果は得られていないのが現実。

その他いずれも、国民の健康に直結する研究開発プロジェクトが並んでいる。
なぜ、こうした分野の研究開発を進めるのに、
わざわざ「スーパー特区」といったものを設ける必要があったのか。

政府の文書を読むより、当サイトに掲載された
井村裕夫・先端医療振興財団理事長(元京都大学総長)のインタビューを
見てもらった方が分かりやすい。

臨床試験が、再生医療に限らず薬についても、日本は非常に遅れてしまった」、
「新しい薬についても、他の医療についてみても日本は後進国に」、
「世界でよく使われている薬100のうち、米国で未承認の薬は1つだけ。
欧州では3つくらい。日本は、なんと38の薬が使えない」、
「がん治療で、日本では使えない薬、承認はされているが適応がとれていない
『適応外』の薬が4割ぐらいある。
日本のがん治療は、米国に比べ半分の薬で行われている」、
「がん患者などは、ハワイまで薬を買いに行く、韓国に行くという状況」…。
(3月3日インタビュー【急を要する臨床研究体制の改革】)

「先端医療開発特区」(スーパー特区)は、
日本の医療再生に大きな役割を果たせるだろうか。

http://scienceportal.jp/news/review/0811/0811201.html

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