2008年12月1日月曜日

「体育」を見直す(8)苦手を減らす新球技

(読売 11月27日)

運動が不得手な児童も、積極的に参加できるチーム球技がある。

静岡市立横内小学校の教室前の廊下には、
数百個のドッジボールが並んでいる。
児童一人ひとりの「マイボール」だ。

そのドッジボールを使う球技「ヨコウチセスト」は、4年生の授業。
アルゼンチン発祥のバスケットボールのような球技「セストボール」を、
同小が約20年前に導入、改良を重ねてきた。

板のないバスケットのゴールが両陣内の中央に一つずつ置かれ、
パスを回してゴールを目指す。

ゴールは360度、どこからでも狙える。
ドリブルは禁止だ。
ゴールは高さ2メートル30、直径70センチで、バスケットより75センチ低く、
25センチ大きいため、シュートが入りやすい。

ドッジボールを使うのは、バスケットボールより軽く、子供が扱い慣れているから。
本来は1チーム5人だが、一人ひとりの役割を増やそうと、
3年前から3人に減らしたり、3対2にしたりと工夫を始めた。

11月初旬の授業は、1チーム3人の男女混合で行われた。
全員がボールを捕ったり、空いているスペースに走り込んだり。
ボールに触れない児童はいない。
勝ったチームは、手をたたいて喜んだ。
「チームワークが一番大切。みんなで作戦を練り、うまくいったら楽しい」と
宮坊昌宗君(10)。

「バスケットだと、上手な子供がドリブルしてゴールを決め、
それだけで勝ててしまう。しかし、セストはパスを回さないと勝てない。
みんながボールに触れる」と授業を指導した高島慎吾教諭(42)が説明。

高島教諭のクラスでは、持久走がいつも最下位で、運動の苦手意識が強い
女児がセストのシュート数がチームで最多になったことがある。
これも、運動能力が向上したというより、自然にボールが回って来た結果。
人数を減らしたゲームを繰り返したことで、5人の試合でも、
一人ひとりの動きが格段に良くなるという効果も出た。

同小では、ほかの集団競技でも、運動の不得意な児童もゲームに
参加できるようルールを変えている。
例えば、サッカーではゴールが四つ。
運動能力の高い児童がドリブルでゴールに前進しても、
もう一つのゴール前の空いたスペースにチームメートを見つけるとパスを選択。
誰にでもボールが行き渡る仕組みだ。

こうした数々の新スポーツを生み出すのが、40年前からの同小の伝統。
球技だけでも、学年ごとに3種目程度、開発したスポーツがあり、
その変形を合わせると100種類近い球技を実践。

現在、中心的に教材開発している金森寛教諭(41)が、
「既存のスポーツは、難しすぎて小学生に合わない場合も多い。
成長に沿った授業をするには、自分たちで新種目を作らないと」と訴える。

10月末の同小の公開授業には、全国から130人以上が訪れた。
先進校の取り組みが広がりを見せようとしている。

◆体育好きの小学生増

ベネッセ教育研究開発センターの調査では、小学5年生約2500人のうち
「体育が好き」と答えたのは、1990年79.4%、96年80.9%、
2001年81.6%、06年84.9%と、年々増加。
「指導の重点が、技能を身につけさせることから、
楽しさを感じさせることに移っているからではないか」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081127-OYT8T00188.htm

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