(毎日 12月27日)
高脂血や高血糖、高血圧などを特徴とするメタボリックシンドロームに
ならないために、最も重要なことは肥満防止。
メタボリックシンドロームが内臓脂肪症候群と呼ばれるように、
特におなかの内臓脂肪が増えると要注意。
肥満防止の基本は、バランスのとれた食事と運動だが、
キノコに含まれる繊維の一種のキノコキトサンが
内臓脂肪の代謝に関係することが分かってきた。
◆細胞膜の構成成分
キトサンといえば、エビやカニの殻から抽出されるキトサンが知られる。
実は、エノキタケなどキノコにも植物性繊維のキトサンが含まれる。
これがキノコキトサンで、キノコの細胞膜などの構成成分。
キトサンを摂取すると、食事に含まれる脂肪を吸着して、
便と一緒に排出されるため、脂肪の吸収を抑える。
甲殻類キトサンとキノコキトサンのどちらも脂肪吸着の働きをもっているが、
最近、キノコキトサンの方には脂肪を燃焼させる働きがある。
キノコキトサンと脂肪燃焼の関係などを研究する
渡邉泰雄・日本薬科大学薬学部教授(薬理学)は、
「キノコキトサンが肥満や生活習慣病の予防になるのではないか」と
さまざまな試験研究を続けている。
◆摂取量の差を解析
キノコキトサンの摂取で、体脂肪率や内臓脂肪が低下するかの試験。
男女46人(30~59歳)を大きく2群に分け、
一方にはキノコキトサンのサプリメント、もう一方には本物そっくりの
偽のサプリメント(プラセボ群)をそれぞれ12週間摂取し、
体重や内臓脂肪の面積、体脂肪率などを比較。
46人は、体格指数(BMI)が25以上の肥満タイプの成人。
キノコキトサンの摂取量は、1日あたり200ミリグラム、400ミリグラム、
800ミリグラムの3群に分けた。
どの摂取群の人も、食習慣や運動などは普段と変わらないように指導し、
キノコキトサンの摂取量の差を客観的に解析(二重盲検法)。
体重の比較では、プラセボ群に変化がなかったのに対し、
キノコキトサンの摂取群は試験前に比べ、平均して0・9~1・8%減少。
体脂肪率でも、キノコキトサンの摂取群は減少し、
キノコキトサンの摂取量が多いほど減少する傾向。
内臓脂肪の面積でも、キノコキトサンの摂取群は平均して減少。
ただ400ミリグラムと800ミリグラムでは大差はなく、
1日あたり400ミリグラムの摂取で十分。
◆皮下脂肪は変化なく
コンピューター断層撮影(CT)を使った画像解析では、
皮下脂肪はほとんど変化しないのに、内臓脂肪の面積は
153平方センチメートルから約半分の74平方センチメートルになるなど、
内臓脂肪の顕著な減少が数多く見られた。
同じ脂肪でも、メタボリックシンドロームに関係するのは
皮下脂肪よりも内臓脂肪だ。
渡邉さんは、「一般に内臓脂肪は落ちにくい。サプリメントを摂取して、
健康な状態のままで3カ月程度で内蔵脂肪が減る結果に驚いた」
◆血糖値下げる作用も
キノコキトサンには、中性脂肪や血糖値を低下させる作用も。
キノコキトサンのどの成分が、脂肪燃焼にかかわっているかの
解明は今後の課題。
脂肪細胞にあるアドレナリン受容体が、脂肪燃焼に関係していることが分かり、
「キノコキトサンがアドレナリン受容体の働きを高め、
レプチンやアディポネクチンの働きの低下を抑えることで、
脂肪燃焼を促しているのではないか」と作用メカニズムを推定。
植物性のキノコキトサンは、エビやカニにアレルギーのある人でも摂取できる。
「体脂肪を下げる基本は適正な食事と運動だが、
効果の出にくい40歳以上の中高年では、キノコキトサンのような機能性食品の
摂取も選択肢のひとつになるのでは」
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◇アドレナリン
副腎髄質ホルモン。交感神経を刺激し、心臓機能の高進、
血管を収縮させることで血圧を上昇させるなどの作用。
アドレナリンが作用するには、アドレナリンを受け取る細胞の側に
スイッチの役目を果たす受容体が必要。
いくつかある受容体のひとつに、β3受容体がある。
脂肪細胞にはアドレナリンβ3受容体があり、脂肪の分解と燃焼にかかわる。
β3受容体の働きが悪いと、脂肪の燃焼が悪くなり、
肥満や糖尿病になりやすくなる。
◇レプチン
脂肪細胞が分泌するホルモンの一種。
血液中のレプチン濃度が高くなると、「たくさん食べた」というシグナルが
脳に送られ、食欲中枢は抑制され、食欲は落ちる。
レプチンは、エネルギーの消費を促す働きをもつ。
◇アディポネクチン
脂肪細胞が分泌するホルモンのひとつ。
肝臓や筋肉で脂肪を燃焼させ、血糖値を下げる働き。
肥満になると、アディポネクチンの分泌量が低下。
http://mainichi.jp/life/health/news/20081227ddm010100139000c.html
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