(日経 12月28日)
高等学校の教育は、小中学校に比べればじつに多彩。
義務教育でもないから様々な学び方があるし、
地域や学校の事情に応じた独自のカリキュラムがあってもいい。
地方からは、必修科目を減らすなど国の基準の緩和を求める声も。
ところが、文部科学省が公表した高校の新学習指導要領案は、
そんな要請に応えているとは言い難く、地方分権には遠い内容。
小中学校の画一的な指導要領も問題だが、
まず高校から、地域や現場に教育の中身を委ねる改革を進めるべき。
新しい指導要領は、一般からの意見を聞いて来年3月までに告示し、
2013年度から本格導入。
卒業に必要な単位数は現行通りだが、内容の上積みが目立ち、
小中学校と同じく「脱ゆとり」色が鮮明。
文科省は、「多様性にも配慮した」と説明。
たしかに理科では科目選択の幅を広げたし、週あたりの授業時間数も
標準の30時間を超えて設定できるよう明文化した。
一方で拘束性も強い。
国語、数学、外国語では選択必修制を転換し、特定の科目を必修とした。
各教科とも、学習内容や範囲を事細かに規定しているのは相変わらずで、
より記述が細かくなった部分も。
「履修漏れ」騒動で注目された世界史必修も、現行通り。
世界史の重要性は論をまたないが、
一連の不祥事は大学受験の実態ともずれがあるから起きた。
これを機に、柔軟な対応をしてもよかったのではないか。
文科省が、全国一律の教育課程を定めて地方や学校に徹底させる。
こういうやり方が学力水準維持に貢献してきた面はあろう。
高校でも、進学率がほぼ100%となれば
一定の基準性が重みを持つのも理解できる。
しかし、それは大枠を示すだけで十分ではないのか。
とりわけ高校は、学校の姿も千差万別で、様々な試みに現場で取り組んでいる。
必修科目の設定をはじめ、文科省の手取り足取りの規定は現場を萎縮させ、
創意工夫の余地を奪うことになる。
政府の地方分権改革推進委員会も、国が自治体を縛る過剰規制の1つに
高校の指導要領を挙げて見直しを求めている。
道州制が議論される時代なのに、
文科省は教育だけは聖域と決め込んでいるのだろうか。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081227AS1K2600126122008.html
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