2009年1月6日火曜日

リニア新幹線への期待と課題

(日経 12月29日)

東海旅客鉄道(JR東海)のリニア新幹線計画が動き出した。

2025年の開業をめざして、東京―名古屋間を超電導リニアモーターカーで
結び、所要時間を40分程度に短縮する。
将来は大阪まで延伸し、東京―大阪を約1時間で結ぶ。

リニアは沈滞気味の日本にとって、久々に夢のある話題。
東名阪の移動時間を大幅に短縮できれば、波及効果は大きく、
新たな経済圏が生まれる可能性も。
大地震などで東海道新幹線が止まっても、リニアがあればバイパスが確保。

地球環境問題を受けて、世界各国で鉄道見直しの機運が高まっている。
日本がいち早く長距離リニアを実用化すれば、海外への展開も期待できる。

だが、実現には課題もある。
まず直面するのは、ルート選定だ。
JR東海は、東・名をほぼ直線で結ぶ南アルプス貫通ルートを希望、
沿線の長野県では、北寄りにう回するルートを求める声も強い。

旧国鉄が行き詰まった一因は、政治圧力で採算性の悪い路線が
たくさん生まれたこと。
この失敗を繰り返してはならない。
地元との協議は大切だが、最後は事業主体のJR東海の判断を尊重すべき。

一方で、JR東海にはまず技術面で万全の体制を求めたい。
運行の安全性を念入りにチェックするのは当然だ。
建設面でも、大深度地下に長大なトンネルを掘るなど難工事が予想。
コストが大きく膨れあがれば、事業の採算性に疑問が生じる。

需要見通しも、精査が必要だ。
リニア新幹線は東海道新幹線と並行営業する。
少子化の進む日本で、2つの路線を満たすだけの人の移動が生まれるか。
関西国際空港のように当初の需要見通しが甘く、後々苦しむプロジェクトは多い。
この二の舞いは避けなければならない。

5兆円を超えるリニアの建設費は、JR東海が自己負担し、政府には頼らない。
これほど巨大なインフラ投資に、民間企業が独力で取り組んだ例は少なく、
JR東海の意気込みの強さを示している。

だが、企業の投資であれば、いくらビジョンが立派でも、
事業として成功しなければ意味がない。
そのことを、JR東海の経営陣はいま一度銘記してほしい。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20081228AS1K2800328122008.html

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