(読売 1月30日)
離島の暮らしを通して、学生が生活を見つめ直す。
鹿児島純心女子大学の調理室には、香ばしい香りが立ち込めていた。
調理服姿の学生15人が、班ごとに、キビナゴをあぶったり、
焼いたクロダイに高菜の葉を巻き付けて煮たりしていた。
それから2時間ほどで、海鮮鍋、煮魚、炊き込みご飯など
6品がテーブルに並んだ。
市内の甑島列島の食材を使った伝統料理ばかり。
看護栄養学部が、島の食事に着目したのは4年前。
コンビニエンスストアやスーパーには、1年を通じて季節感のない
食材が並ぶ飽食の時代。
森中房枝准教授(調理学)は、「島の食生活から、
学生が今を見つめ直すきっかけになれば」
甑島列島は、薩摩半島の西約30キロの東シナ海に浮かぶ
上甑、中甑、下甑の3島からなる。人口約6000人。
漁業で生計を立てる人が多い。
島には高校はなく、「15の島立ち」という言葉が今も残る。
市はそんな島を、丸ごとキャンパスとして全国の大学や短大に使ってもらう
「こしきアイランドキャンパス」という試みを始めた。
学生が、島民と交流するのが条件。
島の自然や文化に触れながら、島の新たな産業や未利用資源の活用策などを
提案してもらう代わりに、市が1団体20万円までの補助金を出す。
「交流で活気が生まれる。島の子供たちには、学生と話をして夢を描いてほしい」
と市企画政策課の村岡斎哲・甑島振興グループ長(50)。
昨夏には、鹿児島純心女子大の伝統食のほか、神戸大、
京都造形芸術大など3団体が、方言の調査をしたり、空き家に芸術作品を展示。
鹿児島純心女子大からは、看護栄養学部の学生と教員計12人が、
地元の主婦ら生活研究グループと交流会を持ち、
小学校では子供たちと一緒に清掃活動もした。
瀬口華代さん(22)(4年)は、島民との会話の中で、
改めて食生活を考えさせられた。
その日に採れた野菜や魚から、何を作るかを決める。
島の食卓には旬があった。
荒天が続くと、島には外からの食料は届かない。
大切さを知っているからこそ、食材は無駄なく使い切る。
「忘れてはいけない当たり前のことを、島の人たちに教えられた」
檜垣奏恵さん(22)(同)は、奄美大島の出身。
古里に比べて、甑の島々には簡単に食べられる土産物が少ないと感じた。
キビナゴを使ったせんべいやクッキー、塩アイスなど、
学生の目線での商品開発を提案。
森中准教授は、「管理栄養士を目指す彼女たちには貴重な経験になったはず」
今後は、島で慶事の際に作られるかまぼこや、子供用の小さなお重など、
最近は見られなくなった料理をレシピに残す取り組みも始めたい。
日常を離れて島民や島の生活に触れる。
学生たちが「今」を考えるには、またとない機会になるだろう。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090130-OYT8T00273.htm
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