(読売 1月31日)
遠隔学習システムが離島の学びを変える。
スクリーンに、目隠しをした米国人の子供が、
福笑いに挑戦する姿が映し出された。
「ライト(右)、ライト……ストップ!」。
映像を見ながら、「耳」や「目」の位置を英語で伝えるのは、
約300キロ離れた沖縄県宮古島市立下地小学校の5年1組の子供たち。
昨年11月に同小で行われた英語活動の授業。
インターネット回線を使ったテレビ会議システムで、
同小と、沖縄本島にある県立総合教育センター(沖縄市)を結んだ。
米国人の子供たちは、近くの嘉手納基地内に住む小学生。
下地小の子供たちは、英語で自己紹介をし、得意の三線の演奏を披露する。
基地の子供たちは、映像を見ながら手拍子を打ち、学校の様子を写真で紹介。
最初は恥ずかしそうだった日米の子供たちだが、
最後は互いのスクリーンに向かって手を振っていた。
昨年7月、1組の児童に英語活動について聞いたところ、
23人中21人までが「外国の人と友達になりたい」と答えた。
しかし、島で外国の子供たちに出会える機会はほとんどない。
授業を企画した平良悦子教諭(40)は、「画面越しであっても、
言葉が通じる喜びを感じた子供たちの学習意欲は高まるはず」
沖縄県は小中学校約450校のうち、4割が国のへき地校の指定。
指定の8割は離島の学校。図書館や書店がない島も。
そんな地域の学習を支援するのが、県立総合教育センター。
3億円を投じて開発した遠隔学習システム「美ら島e―net」の運用が、
今年度から本格的に始まった。テレビ会議のシステムも、その一部。
教員はIDとパスワードがあれば、県内のどの学校ともつなげることが可能。
美ら島e―netには、県内の教員らが作成した約4万件の教材が蓄積され、
子供たちは、その教材を使って自習ができる。
下地小の子供たちがテレビ交流した同じ日、
全校児童24人の宮古島市立宮島小では、4年生2人に億や兆など
大きなけたの計算の指導をする鶴町利之教諭(37)のそばで、
3年生4人が黙々とパソコンに向かっていた。
netから引き出した教材で、「時間」や「体積」など、算数の問題を解いていた。
「複式学級で、他学年の指導をしている間も、子供たちが自分のペースで
苦手な問題に取り組める。
どの問題でつまずいたかも、教員用のパソコンからすぐに把握できます」
離島に多い複式学級を持つ学校では、
netの活用が、教員の負担軽減にもつながっている。
こうしたシステムを利用できるのはまだ42校だが、
新年度には、県内すべての離島やへき地の学校に導入。
センターでは、小学校の英語活動の授業に対応するため、
ネットで学べる英語教材の準備も急いでいる。
子供たちに不利だと感じさせない教育環境の整備は、
行政の大きな責任と言える。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090131-OYT8T00242.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿