2009年2月13日金曜日

離島で学ぶ(8)村営の塾で切磋琢磨

(読売 2月7日)

元校長が、村営塾の講師として学力向上を手助けする。

沖縄県南大東村(南大東島)の中心部の建物に、
学校帰りの子供たちが集まって来た。
子供たちが「先生」と慕うのは、島の小中併置校の元校長、野村哲さん(64)。

沖縄本島から東に約360キロ離れた、
周囲20キロの島の教育熱は高いとは言えない。
12年前から小学校高学年に算数を教えてきた村営の「育英塾」は5年前、
小中学生に5教科を教える「学習支援センター」になった。
起用されたのが、島で育ち、島の校長を退職したばかりの野村さん。
教員生活の中では、南大東島で教壇に立ったのは3年間だけで、
「教員の時には十分でなかった島への恩返し」の気持ちが強い。

センターには、島の小中学生の3分の1の43人が通う。
子供たちは、学校の宿題を済ませた後、漢字や百ます計算など、
野村さんが個別に用意したプリントで、苦手分野に挑む。
小学生が週2日、中学生は週3日で、費用は月2000~6000円。

当初は、学年ごとに時間を分けて授業をしていたが、
「自発的に学ぶ楽しさに気づく場にしたい」と自習を見守る形に変えた。
上級生が下級生の面倒も見る。
小学6年の城間のぞみさん(12)は、「自分のペースで勉強できて楽しい。
下級生に教えることで責任感も出てくる」

人口1300人足らずの島に高校はない。
「小中の9年間で、基礎学力をしっかりつけて送り出すのが我々の責任」と
照屋林伸教育長(57)。
村教委や学校と野村さんが、学年ごとの習熟度や目標を細かく話し合っている。
ここ数年、県内の基礎学力達成度テストで、
村の子供たちは常に平均を上回る成績を残すようになった。

村では、漢字検定や英語検定の受検料も、半額補助。
競争意識が芽生えにくい環境だけに、
切磋琢磨する意識を持ってほしいという願いも込めている。

全国学力テストで2年続けて最下位となった沖縄県では、
民間の塾設置を後押しする動きが全県に広がり始めた。

沖縄県対米請求権事業協会は今年度から、個人が離島などで、
小中学生向けに小規模な塾を運営する際の助成を始めた。
地域の人材を発掘し、学校外の学ぶ場を増やす試み。

離島の悩みは、沖縄全体の悩みでもある。
将来、島を離れる子供たちのために、いま何ができるのか。
離島は、その答えを探し続けるしかない。

◆沖縄県対米請求権事業協会

日本政府が沖縄返還後に拠出した120億円を元に、1981年に設立、
幅広い地域振興事業を手がけている。
塾設置による学力向上支援も、その一環。
拠出は、戦後の米軍による土地接収などに関し、
正当な補償がないまま対米請求権を放棄した問題の対応策。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090207-OYT8T00304.htm

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