(2009年2月6日 共同通信社)
ヘルシンキの中心部から車で15分の郊外に立つ、高齢者向けマンション。
現役時代、建築士として働いたヨウコ・ヘイキネンさん(78)は、
訪問看護を受けながら、妻アンネリさん(73)と2人で暮らす。
ヨウコさんは、若いころにかかったポリオで手足に障害があり、
電動車いすでの生活だが、看護師が来るのは
1日1度のトイレ介助と週1度の入浴介助だけ。
それ以外の面倒を見るアンネリさんの負担は大きいが、
「訪問看護の回数を増やすと、夫は夜8時にはベッドに寝かされてしまう。
普段は2人で12時まで起きてるから、これでいいのよ」と、自立生活を重視。
フィンランドでは特別な事情がなければ、
成人した子供が親と一緒に住むことは少ない。
ヨウコさんも、市内に子供4人が住むが、「みな家族を持ち、それぞれの生活がある。
子供に介護してもらおうとは全く思わない」と当然のように話す。
ヨウコさんの年金は、月額約1280ユーロ(1ユーロ=120円換算で15万4000円)。
日本の介護保険制度には、家族介護者への現金支給はないが、
アンネリさんには夫の個人補助者としての手当が、
市から手取りで月15万6000円支払われる。
介護サービスは、自治体が提供するのが基本。
訪問看護の利用料は、収入に応じて5段階に分かれるが、
ヨウコさんは障害があるため無料。
日本より物価がやや高いことを考えても、生活には困らない。
2人の家に来る看護師(市職員)の月給の手取り額は、
アンネリさんへの手当とほぼ同じ。
低賃金で人気はなく、日本の介護現場と同様、人手不足に悩む。
一部では、フィリピン人看護師を受け入れる動きも。
▽障害ゆえの負担なく
知的障害者のための市立グループホーム。
「ここでの生活も楽しいけど、もっと自由に生活したいから、
看護師のいない施設に移りたいな」。
入居者のラッセ・サンタラさん(24)は活発な口調で話す。
部屋には、自分で買ったゲーム機「プレイステーション2」とソフトがずらり。
ホーム側が置いている家具の中には高級ブランド品もあり、
普通の若者の部屋と遜色ない。
入居者は、23-55歳の男女10人。
昼間は全員、作業所などに通い、夕方帰ってきて
一緒に夕食を食べるという生活パターン。
作業所の工賃は人によって違い、月1万2000-3万6000円。
日本の平均(1万2000円)をやや上回る程度だが、
障害年金が月10万円程度支給され、ホームの利用料を差し引いても
4万8000-7万2000円が手元に残る。
日本のグループホームも、施設の水準や障害者の暮らしぶりはさほど変わらない。
一般企業で働いている場合、日本のほうが経済的には豊かとも。
日本では、作業所に通うにも原則1割の利用料がかかる。
フィンランドでは無料だ。
「障害が理由による負担は生じないようにする」(社会保健省)
という思想が大きく異なる。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/6/91290/
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