2009年2月12日木曜日

離島で学ぶ(7)現地講座 教員の負担減

(読売 2月6日)

離島の教員を支える体制が整い始めた。

スクリーンに大写しになったのは、「30分」の文字。
長崎県大村市にある県教育センター教育情報課の本多博指導主事(40)が
「時間の意味が分かる先生います?」と
机を囲んだ若い教員たちに問いかけた。

「子供たちが1日に家族と話をする時間かな」、
「正解は、子供たちがメールを受け取ってから返信するまでの時間のルール。
長崎は30分、都会なら5分以内。守らないといじめにつながることも」
教員らの表情がこわばった。

同県新上五島町の有川小学校で、昨年12月に開かれた
「授業におけるICT(情報通信技術)活用現地講座」の一幕。
町内の小中学校に勤務する20、30歳代の教員9人が集まり、
情報モラルの指導方法や、ICT機器の効果的な使い方などを話し合った。

上五島中学校の岩本有加教諭(25)は、教員3年目。
「センターで研修や講座を受けるには、たとえ1日でも、宿泊を考えると、
3日分の日程を空ける必要がある。
自分のような若い教員にとっては、島を離れて授業が滞ることが怖い」

教員向けの研修や講座は、センターでは定期的に開かれているが、
長崎県は全国で最も人の住む離島が多い。
小中学校の教員も、約9500人のうち2割が離島勤務。
県西端の五島列島にある新上五島町からセンターへは、
船と車で4時間近くかかる。

離島の教員からは、「講座を受けたくても学校を空けられない」
といった声が以前からあった。
県では、センターから出向いた方が、効率的で教員の負担も減ると判断、
今年度から離島やへき地の学校で講座を始めた。

有川小での講座には、センターから事前に3台の投影機も持ち込まれた。
教員たちは投影機を使って、「はしの持ち方を教えられる」、
「鉛筆の握り方を教えてもいいね」と、授業に使えそうなアイデアを次々と出した。
英語活動に、ICT機器を取り入れたベテラン教員の授業も見学。

同センターは2006年度から、複式学級を受け持つ教員のための
現地講座も始めている。
県内の複式学級は増加傾向で、今年度は小学校390校のうち108校にある。
複式学級は離島に多い。

有川小の講座の参加者の1人で、複式学級がある
新上五島町立仲知小学校の江口正洋教諭(38)はここ数年、
センターでの講座には参加していなかった。
全校児童14人。3人の担任が1人でも欠ければ、負担は大きいが、
「地元での講座なら」と参加。

県は、教員の人事異動の基本方針として、1度は離島での勤務を経験。
本多さんは現地講座を、「離島に暮らす教員同士が、授業の進め方や
悩みなどを相談し合える場にもしたい」
同センターでは、現地講座の種類をさらに増やす方向。

教員の負担や不安を少しでも減らす。
その成果は、離島に学ぶ子供たちに返ってくるだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090206-OYT8T00305.htm

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