(読売 2月4日)
島が求める即戦力を育てる学校ができた。
新潟市から、雪がちらつく日本海をフェリーで2時間半。
佐渡島に昨春、待望の専門学校が開校。
県内で専門学校などを手広く運営する学校法人新潟総合学院の
「伝統文化と環境福祉の専門学校」。
トキが舞い、天然杉の原生林が広がる人口約6万5000人の佐渡は、
環境に優しい島づくりに取り組む「エコアイランド」。
800を超す社寺が残るなど文化財も豊富。
渡辺秀則副校長(52)は、「島全体が大きな教科書」
同校には4学科がある。
宮大工などを目指す「伝統建築」のほか、竹芸などに取り組む「伝統文化」、
フィールドワークに力を入れる「環境マネジメント」の3学科が3年制。
「佐渡でしか学べない」を前面に押し出し、主に島外から学生を呼び込む。
2年制の介護福祉学科だけは、違った側面を持つ。
同学科の学生10人は、全員が島内出身者。
学校から車で10分ほどの特別養護老人ホーム「新穂愛宕の園」を訪れ、
入所者らと談笑しながら、先輩の介護福祉士の仕事を間近に見て学んだ。
「最近寒いから体に気をつけて下さいね」と同学科1年の信田俊さん(19)も
入所者らに声をかけた。
新潟市で介護を学ぶつもりだったが、高校3年の頃に学校ができると知り、
島に残った。
下宿生活は親への負担が大きいし、「のんびりとした島の風土が好き」。
信田さんは、島内の施設で働きたいと考えている。
佐渡から介護福祉士を目指すには、本土の専門学校などに通う例が多かった。
実習先の施設に就職するなど、必ずしも島での就職には結びつかなかった。
人口の35%を高齢者が占める島では、介護福祉分野の働き手は不足。
島内の高校5校から年600人が巣立つが、7割は進学で島を離れる。
若者と雇用をつなぐには、島で学び、働ける環境の整備が必要。
同校を誘致した佐渡市は、全面的な支援体制を敷く。
閉校した佐渡高校金井校舎の建物を市が無償譲渡し、
改修費用など約1億5000万円も負担。
市は開校の半年前、卒業生の就職支援組織を発足。
観光協会や建築組合、社会福祉協議会など20近い団体が入り、
最初の卒業生が出る来春に向けた情報交換が続く。
学校は、まだ定員を満たすまでには至っていないが、
市の担当者は「若者が残ることで、島の活性化につながることを証明したい」
同校では、佐渡で働く介護福祉士が集まって実技講習会を開くなど、
ネットワーク作りの拠点にもなりつつある。
学生の参加も検討している同学科の金岡恵美子講師(55)は、
「学校から介護の担い手を送り出す一方で、島全体が質の高い介護サービスを
提供できるようにレベルアップすることも重要」
官民が手を携えた取り組みが、島の発展につながることを期待したい。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090204-OYT8T00267.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿