2009年2月14日土曜日

医学生、卒後は半数流出 研修医の地域定着率 12県20-35%と低く

(2009年2月9日 共同通信社)

医学部卒業生のうち、出身大学がある都道府県に残って研修医となったのは
49・1%と、2人に1人は他地域へ流出している実態。
今回の調査に合わせて調べた03年度は、57・8%で8・7ポイント低下。

33都道府県で定着率が03年度より低下したが、
特に北陸や山陰、九州などの12県は20-35%と
地元確保が難しくなっている状況が判明、地方の医師不足や地域偏在を示した。

背景には、豊富な臨床例が経験でき、条件の良い都市部などに
地方の人材が集まっていること。

調査は昨年9月に実施。
過去のデータがない東京や大阪の計3校と、出身地に戻ることが条件の
入学枠がある自治医大を除く、国公私立医科系75校について、
卒業直後の動向を調べた。

都道府県別(データは5%刻みで分析)で、
08年度の定着率が最も低かったのは、島根と宮崎の20-25%。
25-35%は青森、富山、福井、鳥取、大分、宮城、高知、長崎など。

高かったのは、65-70%の北海道、大阪、
60-65%の神奈川、愛知、奈良、熊本など。
03年度との比較で低下幅が大きかったのは
千葉、鳥取、島根、山口で25ポイント減。
上昇したのは秋田、栃木、長野、沖縄など7県で、
うち和歌山は15ポイント上昇し、60-65%。

地域医療を担う人材確保のため、大学側も約30校で地元高校生らを対象に
地域入学枠を設けているが、文科省は「このまま低下が続けば、
医師不足に悩む地方はさらに深刻な事態となってしまう」

医師の不足や偏在をめぐり、政府は医学部定員増のほか、
2010年度以降に医療機関の募集枠制限などで特定の地域に
人材が集中しないよう、臨床研修制度を改める方針を固めている。

医学生の半数が、卒業後の臨床研修で出身大学の"地元"を離れてしまう状況に
定着率の低い地方では危機感を募らせる。
研修内容を磨き、学生を引きつけてきた病院もある。

2008年度の定着率が最低レベルの20-25%だった島根県。
島根大では昨年3月、医学部を卒業し医師資格を得たのは82人だったが、
県内で研修医になったのは同大付属病院の16人を含め20人。

「公立病院などへの医師派遣機能にも影響が出ている」と付属病院の担当者。
県内の別の病院長は、「医療は、地域の実情に合わせて対応するのが大切。
過疎化と高齢化が進む状況を理解した学生が離れるのは、大きな痛手だ」

和歌山県の研修医は04年度の49人から年々増え、08年度は74人。
51人を受け入れた和歌山県立医科大病院は、その約7割が同大出身者。
県立医大病院は、研修1年目から将来の専門分野を重点的に経験でき、
希望に応じた柔軟なプログラムづくりが特徴。
一般病院での研修も取り込み、研修医は地域医療の実情や必要性も
肌で感じ取ることができる。

卒後臨床研修センター長の上野雅巳医師は、
「研修が終わった後も地元で働いてもらうために、地域医療を担う各病院が、
研修内容や人間関係も含め魅力的な存在になる努力をしなければならない」

▽臨床研修制度

大学を卒業して免許を取得したばかりの医師に、病院で2年間の研修を
義務付ける制度で、内科など7診療科が必修。
以前は、出身大学の付属病院で研修するのが慣例だったが、
賃金など労働条件の向上などを狙い、2004年度に制度を改正。

医師と病院の双方の希望をコンピューターで照合する「マッチング」などで、
研修先を自由に選べるようにしたが、都市部や臨床例の多い民間病院を
選択する医師が増加。
地方の大学病院などで人材の確保が難しくなる状況が指摘。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/9/91406/

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