2009年4月5日日曜日

「オール地元」で強さ証明 花巻東、岩手にこだわり

(朝日 2009年4月3日)

「弱いといわれる岩手の野球を、岩手の選手で変えてみせる」
春の甲子園で準優勝した花巻東の原動力は、チーム一丸のそんな思い。
選手は全員、県内出身。
東北勢初の優勝には一歩届かず、涙で目を真っ赤にしたが、
岩手代表として初めて決勝を戦った姿に、
甲子園のスタンドも、岩手の街もわいた。

選抜大会の岩手勢は、84年のベスト4が最高。
以後は今大会まで1勝もできず、夏も初戦敗退が6年続く。
花巻東も、過去に4度甲子園に出場、県内実力校の一つに過ぎなかった。

岩手出身の佐々木洋監督は、岩手の子どもだけで甲子園で勝つという
「誰もやったことのない目標」にこだわってきた。
集まるのは、その姿勢に共感した選手が中心。
中学時代にシニアリーグで活躍し、強豪私立からの誘いを断ってくる選手も。

右翼手の佐藤隆二郎君(3年)もその一人。
「うちのチームは、岩手を背負って戦える。
岩手が弱くないということを証明したい」
エース菊池雄星君(3年)は、首都圏や関西からも相次いだ勧誘をけって
花巻東を選んだ。「佐々木監督を男にしたかった」

菊池君は、07年夏に甲子園のマウンドに立ったものの、初戦で敗退。
昨年は、春夏とも甲子園を逃した。
秋の東北地区大会では、岩手から県外に進んだ投手と投げ合って負け、
菊池君は号泣した。

その悔しさがバネになった。
冬、室内での筋力トレーニングや打撃練習に黙々と取り組み、
選抜出場が決まると、三重県に合宿して実戦的な守備練習を繰り返した。
速球で押していた菊池君は、スライダーなどで緩急をつけることを覚え、
テンポよく投げる投球リズムも身につけた。

今大会は、1回戦から準決勝まで31回2失点。
速球は、最速150キロを記録。
この日も9回を1失点。
控え選手が分析したデータをもとに、
バックも打者ごとに守備位置を変え、堅守でもり立てた。

「勝つたび、岩手の皆さんが喜んでくれるのがわかった。
今日も勝ちたかった」
試合後、震える声で話した菊池君は、
「明日から練習して、夏、優勝旗を取りに戻ってきたい」
その時まではと、甲子園の土は持ち帰らなかった。

http://www.asahi.com/sports/bb/TKY200904030218.html

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