(2009年4月24日 共同通信社)
さまざまな組織に成長できる新型万能細胞「iPS細胞」を、
遺伝子を使わずに作製することにマウスの実験で成功したと、
米スクリプス研究所など米独チームが、米科学誌セル・ステム・セルに発表。
がん化などの懸念が少ない安全な手法として注目。
京都大の山中伸弥教授らが開発したiPS細胞は、
皮膚などの細胞に4つの遺伝子を組み込んで作る。
米独チームの方法では、遺伝子は入れず、遺伝子が作るタンパク質を
あらかじめ別に作ってから細胞に入れる。
タンパク質をマウスの胎児の皮膚細胞に入れて約1カ月培養すると、
iPS細胞になった。
肝臓や心筋、神経の細胞などに分化することも確認。
4つの遺伝子のうち、がん遺伝子を除いた3種類で作ったタンパク質を
入れても、iPS細胞ができた。
細胞膜を透過させてタンパク質を細胞の中へ入れるのは、
タンパク質が大きいため通常は難しい。
富沢一仁熊本大教授(生理学)が、末端にアルギニンという
アミノ酸11個を付けて効率的に入れる方法を開発。
米独チームはこの方法を利用、アルギニンを作る遺伝子と
iPS細胞作製に必要な遺伝子を組み合わせ、
細胞の中に入りやすいタンパク質を大腸菌に作らせた。
iPS細胞は、ウイルスを使って遺伝子を皮膚細胞などに組み込んで作り、
がん遺伝子を省略しても作製できるが、効率は落ちる。
導入に使うウイルスも細胞をがん化させる恐れがあるほか、
細胞に外から遺伝子を入れると染色体に何らかの影響を与える恐れがあり、
安全な手法開発への取り組みが進んでいる。
◆富沢一仁熊本大教授(生理学)の話
細胞に遺伝子を入れる手法では、染色体への影響を
完全に排除することはできない。
タンパク質を直接入れるなら、心配はなくなる。
iPS細胞の安全面での競争は、これで決着がついたのでは。
細胞に遺伝子を導入してできるタンパク質は、
大腸菌に作らせた場合と性質が違う場合もあるが、
iPS細胞ができたという点でほぼ同等と考えて良い。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/4/24/95898/
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