(読売 4月27日)
「環境に力を入れる米国のグリーン・ニューディール政策は、大きな追い風。
むこうで関心を持つ企業もある。年内には提携にこぎ着けたい」
東京理科大が、東京・神楽坂のキャンパスで開いた技術説明会。
熱を電気に変換する新しい熱電素子を開発した飯田努・准教授は、
海外での実用化に夢を膨らませていた。
熱電素子を使えば、ボイラーやエンジンの排熱で発電でき、
エネルギーを無駄にしない。
米国は、技術を大きく普及させる格好の舞台。
大型トラックから大規模工場まで、潜在的な市場は日本の数十倍に。
従来の熱電素子には、毒性のある鉛や高価なビスマスが
使われていたが、飯田准教授の開発した素子は、
安価で安全なケイ素とマグネシウムが原料。
共同研究する米ワシントン大を通じ、米国企業への売り込みにも力が入る。
海外の企業と連携を目指す大学の試みは、まだ始まったばかり。
2007年度の大学と企業の共同研究約1万6000件のうち、
海外の企業との研究は、0・7%に過ぎない。
研究者間の個人的な関係に頼っていては伸びが期待できないため、
海外での提携先の開拓や国際特許の取得に、
大学が主体的に取り組めるようにと、文部科学省が支援を始めた。
理科大はこの制度を活用。
「大化けする可能性が高い」と、第1弾の目玉商品に熱電素子を選び、
飯田准教授を、欧州の技術展示会に派遣。
今年も二つの国際学会に送り込む。
理科大の国際連携コーディネーター・仁木保さんは、手応えを感じている。
「国内では実績がないと敬遠されがちだが、
海外の企業は未知の可能性に注目する。どんどん売り込みたい」
京都大学も、今年2月にロンドンに産官学連携欧州事務所を開設し、
常駐の職員を置いた。
「提携する英国の大学を足がかりにして、企業を探したい」、
同大産官学連携センターの池内哲之特任教授は意気込む。
何の技術を積極的に売り込めば良いのか、まだつかめていない。
企業のニーズを探りながら、見極めていく方針。
理科大を飛び込み営業もする機敏なセールスマンに例えれば、
京大は客とじっくり話し合う老舗のイメージとも言えるが、
「おっとり感」は否めない。
「大学を知ってもらうことが第一だが、相手の要求に
スピーディーに応じるビジネス感覚も欠かせない」
会社社長から東北大に転じ、同じように手探りで海外での産学連携に
取り組む高橋富男教授は、そう指摘。
http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090427.htm
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