2009年5月6日水曜日

学生発 フリーペーパー、全国200以上

(朝日 2009年4月27日)

大学生が作るフリーペーパーが続々と生まれている。
全国で200以上。
学生自身が広告をとり、記事の取材や編集をし、配布まで行う。
自分たちの書きたいことだけを書いて満足するのではなく、
読者や広告主を満足させる誌面を目指す。

◆美大発 高品質を企業が評価

「この色は目立ちすぎ」
「こっちのデザインの方が見やすい」
東京都国分寺市のビルの一室。

フリーペーパー「PARTNER(パートナー)」のスタッフが、
誌面の試し刷りを囲んで議論。
納得できる仕上がりになるまで、話し合いは続く。

昨年、大学生によるフリーペーパーのコンテスト
「スチューデント・フリーペーパー・フォーラム2008」
立命館大の「CREW」、北九州市立大の「WATCHa!!」など、
東北から九州まで72誌の応募、優勝したのが「PARTNER」。
07年4月に創刊。

多摩美術大、武蔵野美術大、女子美術大など
東京近郊の美大生約20人が中心。
授業で様々な作品を作っているが、学外で発表する場が少ないことから、
多くの人の目に触れる場として雑誌に挑戦。

発行部数は3万部で、年4回発行。
全国の美大35校に置かれている。
広告やアート業界で働く先輩のインタビュー、就職や留学に関するアンケート
といった特集が並ぶ。
美大生が作っているだけあり、写真や誌面デザインのレベルは高い。

多摩美術大2年の高木皓平編集長は、
「作るのも読むのも美大生。今学生が求めていることが分かる」
広告は3社と年間契約、トヨタやソニーなどの大企業から入ることも。
美大生に確実に届く媒体であることが評価。

◆岐阜発 県内の大学結びたい

発行意欲は、地方の学生も同じ。
岐阜県内で出されている情報誌「GIFT(ギフト)」は、
岐阜や名古屋の大学に通う学生で作る団体「岐阜人」が07年から発行。
年4回、1万部をキャンパスや駅前で配っている。

同県内の大学は、それぞれの所在地まで距離が遠く、
大学間の交流はほとんどない。
編集部の岐阜市立女子短大2年、神原千恵さんは、
「周りの学生は、家と学校の往復だけ。サークルも活発じゃない」

名古屋に近く、学生は「名古屋に比べて何もない」と思いがち。
大学間をまたいだ団体をつくって、学生同士をつなぎ、
岐阜の魅力を伝えたい、と創刊を決めた。

岐阜大大学院2年の中尾祐也・岐阜人代表は、
「自分の足で歩いて探せば、楽しい場所はいろいろあるし、
魅力的な人もいる。もっと外に出よう、と提案したい」

大学生がどんな記事を求めているのか、試行錯誤。
最も人気があるのは、お店紹介のページ。
おしゃれな学生のスナップも、「友達が載っているかも」と
手に取ってもらうきっかけに。
サッカーJ2のFC岐阜の応援ページも作った。

◆講座発 早大有数の人気科目

フリーペーパーを学問として学ぶ大学も。
早稲田大では昨年度から、全学共通科目として
「フリーペーパー講座」を開設。

定員50人に、400人以上が応募する人気科目に。
実際に、フリーペーパーを発行する会社関係者らを講師として招き、
自社の戦略や国内外のフリーペーパーの歴史を語ってもらう。

講座から生まれたフリーペーパーの一つが、「Re:ALL(リアル)」
文化構想学部の学生が今月創刊。
創刊号の特集は、「文構って何?」
同学部は07年にできたばかりで、同学部3年の西山武志編集長は
「他学部の学生や企業に配ったり、受験生向けのイベントを開いたりして、
文化構想学部の知名度を上げたい」

◆昔は同人誌 今はビジネス

なぜ、学生はフリーペーパーにひかれるのか?
早大メディア文化研究所の森治郎客員教授によると、
(1)学内や地域の情報
(2)サークルや趣味
(3)就職やキャリア形成、を扱うものが多い。
「有料誌に見劣りしない質の高いものが増えた。
(1)は、学生が地元を歩くことで、地域活性化につながる可能性もある」

同人誌のようなミニコミ、学生新聞は昔からあった。
今の学生は、フリーペーパーづくりを通じてビジネスを学んだり
社会とつながったりしたいと考えているのが特徴。

誌面づくりのソフトの値段が安くなり、操作も簡単になったことも、
フリーペーパーを身近にした。

早大の学生だった丹羽健二さん(24)は07年8月、
ベンチャー企業やマスコミなどのアルバイト情報を載せる
「キャリアバイト」を1人で始めた。
学生時代から起業に関心があり、ベンチャー企業で社員と同等に働いた。
「お金をもらいながら成長できた」

その経験から、アルバイトをする学生に
「仕事力を高め、自分の夢につなげる働き方を広めたい」と、
ベンチャーなどに絞った求人情報誌を作る。
卒業した昨年、ネット関係の会社を立ち上げ、
キャリアバイトも事業の一つにした。

編集部には早大の後輩、東京大、上智大などの約20人が加わった。
年6回発行で、首都圏の大学に、計1万部を手渡ししている。
記事は、仕事に関するインタビューやコラムと、
アルバイトやインターンの求人広告が中心。
現在の編集長で早大4年の中村翔さんは、
「求人広告を出してくれた会社から、キャリアバイトを見て来る学生は
意識が高いと言われると、やりがいを感じる」

◇フリーペーパー

広告収入を財源に、無料で定期的に発行される新聞や雑誌。
日本生活情報紙協会の06年の調査では1200紙、計3億部が発行。
宅配や駅などにラックを置いて配布するものが多い。

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200904270102.html

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