2009年5月3日日曜日

若手育成Jの挑戦 練習量が増加、私生活もケア

(朝日 2009年4月28日)

高校生を育てるJリーグの下部組織「アカデミー」で、
通信制の学校に通ってサッカーに専念させる取り組みが広がっている。
高校生年代の全員を通信制に通わせ、プロと同じように練習する
J1新潟の取り組みが注目。

◆新潟の場合

新潟は、専門学校と通信制高校の両方で学んで高校卒業資格を取る
プログラムを用意し、ユース所属の33人がそこで学ぶ。
06年から始め、全員になったのは今年から。
平日も、午前と午後の1日2度の練習が基本。
全寮制で高校1、2年生は専門学校の寮、3年生はプロと同じ寮。

「以前は、自宅―学校―クラブと通うため、練習開始も帰宅も遅かった。
体力回復するだけの余裕がなく、鍛えても疲れるばかりで伸びなかった。
今は練習量が増え、休む時間も十分。
昨年プリンスリーグ(北信越)で初優勝するなど、成果が出ている」と
片渕浩一郎監督。

力を認められたり、プロでけが人が出たりすると、
「明日はトップチームへ行け」と出来るのもこの環境ならでは。

普通の高校生活で身につける社会性を育めるのか、という厳しい目も。
監督やコーチが、普段の生活に目を配る。
生活にかかわることが、サッカー指導に生きることもある。

「今の高校生は、必要なものを与えられて当たり前という
育てられ方をしている」と、実感した片渕監督は、
それが目標にどうやって到達するかを、自分で考える力が足りない
原因だと気づいた。
「そこをどう指導するか。それができればサッカーもうまくなる」

◆他チームは?

マイナス面としては、全員が寮と通信制という前提が逆に障害となり、
他チームに人材が流れる例。
その点、全日制と通信制の2校と提携し、選手と保護者の希望に応じる
東京ヴの取り組みが先を行く。
現在10人が通信制を選び、東京ヴのクラブハウスで午前中に自習。

鹿島学園高(茨城)と提携している鹿島のような例。
午前中の練習を体育の単位に振り替えたり、一部の授業を補習にしたり、
練習しやすい環境を整えている。

◆Jリーグ技術委員長・上野山信行氏に聞く

サッカーJ1ガ大阪で取締役育成・普及部長を務め、
多くの代表選手を生み出した上野山信行氏(51)が、
Jリーグ技術委員長に就任。リーグ全体の若年層強化を担う。

当面の仕事はクラブ訪問。
育成時代の指導者が、トップチームに上がった選手と
密に連絡を取る必要性を強調。

「10代は精神的なもろさもある。
トップに上がっても、当たり前のようには試合に出られず、ストレスがたまる。
精神的に自立する20歳までケアすべき。
幼い頃から指導していれば、個々の心理面についてよく知っている」

各クラブに、育成のスペシャリストを早急に養成しなければならない。
現在、育成の指導者は現役引退してからトップチームを指揮するまでの
「ステップ」ととらえられがち。入れ替えも早い。

「クラブにとっても、選手は自前で育成するほうが、
時間はかかるが高額の移籍金で外国人選手などを取るより得。
育てた選手を、他クラブへ移籍させればクラブのもうけになる可能性も」

訪問では、細かな指導法は問われれば教えるが、あとは各クラブにまかせる。
「自分は、28歳で選手を引退して指導者になったが、
当時は体も動くし、プレーを見せるだけの一方的な教え方。
同時に、行き詰まりも感じていた。

30歳を過ぎた頃、夜泣きする長女に『泣くな』と怒鳴ったことが。
妻に、『こんな小さい子供は聞かん』と言われた。
その時に気づいた。
わからない相手に、こちらの考えを押しつけてはだめだということを」

優れた指導者は優れた聞き役、の持論を伝えていきたい。

http://www.asahi.com/sports/fb/TKY200904280105.html

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